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粉末X線回折法 基礎講座 第1回 シリーズ概要

長尾 圭悟

51巻1号通巻113号(2020年4月) , 13-17

2000年代後半までは、汎用粉末X線回折装置の検出器としてシンチレーションカウンター(SC)が主流でした。その後、一次元(1D)検出器や二次元(2D)検出器の登場、多層膜ミラーをはじめとする光学系の進歩により、XRD装置の性能は大きく向上しました。

また、解析ソフトウェアも飛躍的に進化し、結晶子径や格子定数の評価に加え、全パターンフィッティングやFundamental Parameter(FP)法、さらには結晶子径の異方性や分布を考慮した高度な解析が可能になっています。

こうした技術革新により、高品質なデータを取得するために求められる測定条件や装置設定も変化してきました。一方で、それらを体系的に解説した資料は限られており、実践的なノウハウを学ぶ機会は多くありません。

本連載では、最新の測定技術や応用事例も交えながら、粉末X線回折(XRD)の基礎から実践までを分かりやすく解説します。導入編となる本稿では、粉末X線回折法の原理、装置構成、およびXRDによって得られるさまざまな材料評価情報について概説します。

主な特徴

  • 粉末XRDは、回折ピークの位置と強度を利用して結晶相を同定する手法であり、同じ化学組成を持つ物質であっても、異なる結晶構造を識別することができます。
  • 近年の粉末X線回折装置は、一次元・二次元検出器、高性能な光学系、ならびに高度な解析ソフトウェアの発展により、従来のシンチレーションカウンターを用いたシステムと比べて大きく進化しています。
  • 現在では一次元(1D)検出器が粉末XRD測定の標準となっており、高い角度分解能を維持しながら効率的にデータを収集できます。さらに二次元(2D)検出器を用いることで、デバイリングの観察や優先配向、粗大結晶粒といった試料特性を可視化することができます。
  • 粉末XRDは非破壊分析が可能であり、試料調製も比較的容易です。また、照射領域全体の平均的な構造情報を取得できることが特長です。
  • 結晶相の同定に加え、定量分析、結晶化度、結晶子径、格子ひずみ、結晶構造解析、その場測定、配向解析(テクスチャ)、残留応力評価、PDF解析、さらには粒子径や細孔径の評価など、幅広い用途に活用されています。

まとめ

粉末X線回折法(粉末XRD)は、試料中に存在する結晶相を調べ、その構造情報を得るために用いられる手法です。この手法は、X線が結晶内の規則的に配列した原子面と相互作用する現象を利用しています。面間隔と入射角がブラッグ条件を満たすと、散乱されたX線同士が干渉し、特定の角度で回折ピークが生じます。これらのピークの位置や形状には、物質に関するさまざまな情報が含まれています。

このため、粉末XRDは、化学組成が同じであっても結晶構造が異なる物質を区別するために有用です。この手法は非破壊であり、通常は複雑な試料調製を必要としないため、粉末試料だけでなく、多くのバルク材料にも広く利用されています。

粉末X線回折装置は、X線源、幾何学配置を制御するゴニオメーター、および回折X線を検出する検出器の3つの主要な要素で構成されています。装置の性能は、光学系と検出器の種類に大きく依存します。

最新のシステムの光学系は、反射法か透過法かといった測定方法や試料の特性に応じて、平行ビーム光学系、発散ビーム光学系、あるいは集光ビーム光学系が選択されます。

検出器の性能も重要な要素です。従来の0次元(0D)検出器では、回折強度を一点ずつ測定していました。一方、一次元(1D)検出器は、より効率的にデータを収集でき、高い強度と良好な分解能を両立できることから、現在の粉末XRD測定における標準となっています。さらに、二次元(2D)検出器は、より広い範囲の回折パターンを一度に取得できるため、デバイリングの観察や、優先配向、粗大結晶粒の存在などの試料特性を把握するのに有効です。

粉末XRDは、結晶相の同定だけに利用されるわけではありません。各相の定量分析、結晶化度の評価、結晶子径や格子ひずみの解析、結晶構造の精密化、その場測定による構造変化の追跡、さらにはテクスチャ解析や残留応力評価など、幅広い用途に活用されています。最適な測定条件や装置構成は、試料の種類や評価目的によって異なります。

よくある質問

粉末X線回折(XRD)は、結晶相の同定に加えて、相組成の定量分析、結晶化度の評価、結晶子径や格子ひずみの解析、結晶構造解析など、幅広い材料評価に利用されています。また、その場測定による構造変化の追跡、配向解析(テクスチャ)、残留応力評価、PDF解析による局所構造解析も可能です。さらに、小角X線散乱(SAXS)などの関連手法と組み合わせることで、粒子径や細孔径の評価にも利用されています。

化学組成が同じ物質であっても、原子の配列が異なれば結晶構造も異なります。例えば、ダイヤモンドとグラファイトはいずれも炭素から構成されていますが、原子の並び方が異なるため、まったく異なる性質を示します。同様に、ルチルとアナターゼはどちらもTiO₂ですが、それぞれ異なる結晶構造を持っています。X線回折では、結晶中の原子配列に応じて特有の回折パターンが得られます。回折ピークの位置は格子面間隔に、ピーク強度は原子の種類や配列に依存するため、化学組成が同じであっても結晶構造が異なれば回折パターンも異なります。そのため、粉末XRDを用いることで、それらを明確に識別することができます。

粉末X線回折(XRD)の大きな利点の一つは、非破壊で測定できることです。そのため、測定後の試料を他の分析や評価に利用できる場合が多くあります。また、多くの測定は大気中で実施できるため、試料調製が比較的容易であることも特長です。さらに、XRDは試料のごく一部ではなく、X線が照射された領域全体の平均的な構造情報を取得できるため、材料全体の代表的な特性を評価するのに適しています。このような特長から、粉末X線回折法は研究開発から品質管理まで、幅広い分野で利用されている実用性の高い分析手法となっています。

一般的な粉末X線回折計は、X線を発生させるX線管球、X線管球・試料・検出器の位置関係を制御するゴニオメーター、そして回折X線を測定する検出器の3つの主要な要素で構成されています。近年の多くの装置では、試料を水平に保持する水平型ゴニオメーターが採用されており、粉末、液体、ゲル、バルク材料など、自立が難しい試料でも容易に測定することができます。また、加熱・冷却ステージや雰囲気制御装置などの各種アタッチメントを追加することで、その場測定をはじめとする特殊な実験や高度な材料評価にも対応できます。

粉末X線回折(XRD)で使用される検出器は、測定効率や取得できる情報の量によって、0次元(0D)、一次元(1D)、二次元(2D)に分類されます。0次元検出器は、角度ごとに1点の回折X線だけを測定する方式です。回折パターン全体を取得するには、検出器を少しずつ動かしながら順番にデータを集める必要があります。一次元検出器は、多数の検出素子を直線状に配置しており(ストリップ素子)、一度に広い角度範囲のデータを取得できます。そのため、0次元検出器と比べて測定効率が大幅に向上し、高い回折強度と良好な角度分解能を両立できることから、現在の粉末XRD測定における標準的な検出器となっています。二次元検出器は、検出素子を面状に配置した構造を持ち(ピクセル素子)、回折パターンを二次元画像として取得できます。これにより、デバイリングを直接観察できるほか、優先配向や粗大結晶粒の存在など、試料由来の特徴を視覚的に把握しやすくなります。一般に、一次元・二次元検出器は0次元モードとして、0次元測定を実施可能で、0次元測定は光学系調整や超高分解能な測定、一次元測定は日常的な粉末測定、2D検出器は試料の配向や不均一性の評価を含む高度な解析に適しており、目的に応じて使い分けられます。

光学系は、X線ビームの形状や広がり方を制御し、試料にどのように照射するかを決定する重要な要素です。そのため、測定強度、分解能、バックグラウンド、さらには測定可能な試料の種類にも大きな影響を与えます。粉末XRDでは、集中法、平行ビーム法、集光ビーム法などの光学系が用いられ、それぞれに特長があります。集中法光学系は主に反射測定で用いられ、高い回折強度を得やすいことが特長です。平行ビーム法光学系は反射測定と透過測定の両方に適用でき、試料表面の凹凸や位置ずれの影響を受けにくいという利点があります。また、集光ビーム法光学系は透過測定に適しており、フィルムや配向性の強い試料の評価に利用されます。高品質な測定データを得るためには、試料の特性や測定目的に応じて、適切なX線源と光学系を組み合わせることが重要です。

一次元(1D)検出器は、測定速度、回折強度、角度分解能のバランスに優れているため、現在の粉末XRD測定で広く利用されています。従来の0次元(0D)検出器では、回折パターンを1点ずつ順番に測定する必要がありました。一方、一次元検出器は多数の検出素子を直線状に配置しているため、一度に広い角度範囲のデータを収集できます。その結果、高い角度分解能を維持しながら、0次元検出器よりもはるかに高い測定効率と回折強度を実現できます。また、一次元検出器は検出器自体が2θ方向の位置情報を持つため、0次元検出器のように受光スリットに強く依存する必要がありません。このため、高品質な回折データを短時間で取得することが可能です。こうした特長から、一次元検出器は日常的な粉末XRD測定において、高品質なデータを効率よく取得できる実用的な検出器として標準的に使用されています。

必ずしも同じではありません。一般に、複数の相を含む粉末試料では、各相が照射体積内に均一に分散しているため、高い信頼性で定量分析を行うことができます。一方、バルク材料でも、X線の侵入深さの範囲内で各相が均一に分布していれば定量分析は可能です。しかし、試料が層状構造を有する場合には、X線吸収の影響により表面近傍の相が実際よりも多く存在するように観測されることがあります。また、バルク材料では相組成の評価だけでなく、結晶配向(テクスチャ)や残留応力が重要な評価対象となることが多く、粉末試料とは異なる視点で解析が行われます。

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