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粉末X線回折法 基礎講座 第8回 結晶化度

木原 香澄

56巻1号通巻123号(2025年4月) , 6-10

粉末X線回折(PXRD)基礎講座の第8回では、結晶化度(Crystallinity)について解説します。結晶化度は、医薬品や高分子材料などの試料がどの程度結晶化しているかを示す指標であり、粉末X線回折パターンから評価することができます。

結晶化度は、試料中の結晶相の割合を表す値であり、
結晶化度 = 結晶相量 ÷(結晶相量 + 非晶質相量)
として定義されます。通常は %Crystallinity(結晶化度%) として表されます。

本稿では、プロファイルフィッティング法によってピーク分離を行い、結晶化度を求める方法について説明します。この手法では、結晶相に由来する回折ピークと、非晶質相からの散乱によって生じるハロー(ブロードな散乱ピーク)を分離し、それぞれの積分強度を用いて結晶化度を算出します。

この方法の利点は、純粋な結晶試料や純粋な非晶質試料を準備する必要がないことです。一方で、非晶質ハローの形状や範囲をどのように設定するかによって結果が変わるため、解析者の判断が結晶化度に影響を与える可能性があります。

しかし、バックグラウンド推定やハローのピーク形状を適切に設定することで、解析者によらず高い再現性を得ることができます。

主なポイント

  • 結晶化度(Crystallinity)とは、試料中で結晶質が占める割合を表す指標です。 一般に、結晶相と非晶質相の合計に対する結晶相の割合として定義されます。
  • PXRDでは、鋭い回折ピークは結晶相、ブロードなハローは非晶質相に対応します。 これらを分離することで結晶化度を評価できます。
  • 結晶化度は、プロファイルフィッティングによって結晶ピークと非晶質ハローを分離し、それぞれの積分強度から算出します。 この手法では、純粋な結晶試料や非晶質試料を用意する必要はありません。
  • 結晶化度評価で最も難しい点は、バックグラウンドと非晶質ハローの設定です。 特に結晶化度が高い試料では、わずかな設定の違いが結果に影響することがあります。
  • 測定条件も結果に影響します。 試料ホルダーの種類、光学系やスリット条件、試料の優先配向などによって、求められる結晶化度が変化する場合があります。

まとめ

結晶化度とは、材料中で規則的な結晶構造を持つ部分の割合を示す指標です。X線回折では、結晶相は鋭い回折ピークとして現れ、非晶質相はハローと呼ばれる幅広い散乱として観測されます。これらを分離することで、試料の結晶化度を評価することができます。

結晶化度は、結晶相に由来する散乱強度を、結晶相と非晶質相を合わせた総散乱強度で割ることで求められます。実際の解析では、単純にピーク高さを比較するのではなく、プロファイルフィッティングによって結晶ピークと非晶質ハローを分離し、それぞれの積分強度から結晶化度を算出します。この方法では、純粋な結晶試料や純粋な非晶質試料を準備する必要がありません。

一方で、結果の精度は測定条件や解析方法に大きく依存します。空気散乱や試料ホルダー由来のバックグラウンド、さらには繊維やフィルム試料で見られる優先配向は、結晶化度の評価に影響を与える可能性があります。そのため、バックグラウンドや非晶質ハローを適切に設定し、すべての試料に対して同じ解析条件を適用することが、高い再現性を得るために重要です。

本稿では、POMで68%、ポリプロピレン繊維で50%、HDPEで72%、LDPEで49%の結晶化度が得られており、本手法が高分子材料の結晶性評価に有効であることが示されています。

よくある質問

試料ホルダーは単なる容器ではなく、測定結果に直接影響を与える光学系の一部です。そのため、試料に適さないホルダーを使用すると、バックグラウンドの増加やホルダー由来の回折ピークの発生、さらにはピーク強度比の変化を引き起こすことがあります。これらは相同定や定量分析の精度を低下させ、誤った解析結果につながる可能性があります。適切な試料ホルダーを選択するためには、試料の組成、X線吸収特性、物理的形態(粉末、バルク、薄膜など)、さらに空気や湿気に対する感受性を考慮する必要があります。

炭素や多くの有機材料はX線の吸収が小さいため、X線が試料を透過して試料ホルダーに到達し、ホルダー由来の散乱が測定データに現れることがあります。例えば、ガラスホルダーを使用した場合、2θ = 20~30°付近にブロードなハローが観測されることがあります。このような試料にはゼロバックグラウンドホルダーの使用が推奨されます。ホルダー由来の散乱を最小限に抑え、微弱な回折ピークの検出にも有利です。

多くの粉末XRD測定では、粒子径がおよそ10 μm程度になるよう調製することが実用的な目安とされています。粒子が大きすぎる場合、照射される結晶粒の数が不足し、回折リングや回折円錐の一部だけが強く回折するため、ピーク強度が不安定になります。その結果、回折パターンが統計的に偏り、測定されるピーク強度比の信頼性が低下することがあります。一方で、粒子を細かくしすぎることにも注意が必要です。特に粒径が約3 μm以下になると、結晶子径の減少や粉砕によって導入されたひずみの影響により、回折ピークが広がり、ピーク頂点の強度が低下する場合があります。このため、多くの材料では、十分な粒子統計と良好なピーク形状の両方を確保できる粒径として、約10 μmが実用的な目安となります。

優先配向を低減する有効な方法の一つは、キャピラリーやフィルムを用いた透過測定です。これらの試料調製法では、一般的な反射測定用のプレス成形試料に比べて加わる圧力が小さいため、粒子の配向が生じにくくなります。また、測定中に試料を回転させることで、優先配向や粗大粒子による影響を平均化し、より代表性の高い回折データを得ることができます。反射測定では、リング型ホルダーを用いたバックローディング法も有効です。この方法では試料表面を押し固めて平滑化しないため、粒子の配向を抑制でき、ピーク強度比の再現性向上にもつながります。

試料高さのずれ(偏心)は、XRD測定において最もよく見られる誤差要因の一つです。反射法では、試料表面がゴニオメーターの回転中心上に位置していることが重要です。試料位置が回転中心より低いと回折ピークは低角側へ、高いと高角側へシフトします。このピークシフトは低角領域で特に大きく、ゴニオメーター半径が小さいほど影響は大きくなります。

測定範囲を決める際は、まず予備スキャンを行って試料の回折ピーク分布を確認することを推奨します。実際のピークを見逃さないため、測定範囲の下限は最も低角の回折ピークよりも少し低い角度に設定するのが一般的です。また、多くの材料では高角側まで測定範囲を広げることで、解析に利用できるピーク数が増え、結果の信頼性が向上します。一般的な目安として、有機材料では2θ ≈ 60°程度、無機材料では2θ ≈ 90°程度まで測定すると良好な結果が得られることがよくあります。

ステップサイズと走査速度は、測定時間とデータ品質のバランスを決める重要なパラメータです。ステップサイズは、回折ピークの形状を正確に記録できる程度に十分小さく設定する必要がありますが、過度に小さくすると各ステップで得られる計数値が減少し、ノイズの影響が大きくなります。一般的には、最もシャープなピークの半値幅(FWHM)の約1/7~1/10を目安とします。走査速度については、定性分析であれば主要ピークが約3,000カウント以上、定量分析であれば約10,000~20,000カウント以上となるよう調整することが推奨されます。測定時間を長くして統計精度を向上させることで、微弱なピークの検出能力も高まります。

空気や水分に敏感な材料は、通常、不活性ガス雰囲気下のグローブボックス内で試料調製を行い、気密ホルダーに封入した状態で測定します。これにより、測定中の酸化や吸湿を防ぐことができます。気密ホルダーにはさまざまな種類があります。ナイフエッジを備えたホルダーは、低角領域での散乱を抑制し、バックグラウンドを低減できるという利点があります。一方で、高角領域では窓材やホルダー構造の影響により、2θ ≈ 60°以上で回折強度が低下する場合があります。そのため、測定対象や必要な測定範囲に応じて、適切な気密ホルダーを選択することが重要です。

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