アプリケーションノート B-XRD1173
はじめに
医薬品原薬は、晶析条件や温度・湿度の影響により、目的とする結晶多形とは異なる多形が生成したり、相転移したりすることがあります。こうした多形は微量であっても、製造・保存中の結晶相転移を引き起こし、溶出性、安定性および製剤性能に影響を及ぼす可能性があります。そのため、開発段階で微量多形の有無や含有量を正確に把握することが重要です。現在、粉末X線回折法による定量分析にはリートベルト解析が広く利用されています。しかし、リートベルト解析は全相の存在比の合計が100%となるように計算されるため、1%以下の微量相では他相の定量結果の影響を受けやすいという課題があります。そこで本アプリノートでは、1%以下の低含有率の相の定量に有利な検量線法を用い、微量多形の検出限界、定量下限を調べました。
測定・解析例
試料には、抗てんかん薬として知られているカルバマゼピンを用いました。図1にロットAのX線回折プロファイルとカルバマゼピンForm IおよびForm IIIの標準パターンを示します。ロットAのプロファイルはForm IIIとよく一致しました。次にこのロットAにForm Iの純結晶を0.1、0.2、0.5、1.0 wt%添加して、混合試料を調製しました。各試料のX線回折プロファイルを1測定あたり約11分で測定し、検量線を作成しました。
図1に示すForm IとForm IIIの標準パターンを比較するとForm Iは2θ: 12.3°付近にForm IIIと重ならない比較的強度の高いピークを持つことがわかります。そのため、Form Iの検量線作成用に2θ: 12.3°のピークを選択しました。図2に12.3°付近のForm Iに由来するピークの拡大図と、そのピークの積分強度から作成した検量線を示します。検量線の相関係数はR = 0.9907であり、Form I添加量と積分強度との間に良好な相関が認められました。さらに、同一試料を10回測定したときの積分強度の標準偏差から、検出限界および定量下限を算出しました。その結果、検出限界 (3σ)は0.03 wt%、定量下限 (10σ)は0.1 wt%と算出されました。
以上のように、粉末X線回折法と検量線法を組み合わせることで、原薬中の微量多形を高感度かつ短時間で検出・定量することができます。本手法は、開発段階における結晶多形の管理や晶析条件の最適化に有用です。
図1 ロットAのカルバマゼピン原薬の結晶相同定結果
図2 Form I由来のピーク拡大図と添加量から作成した検量線
推奨装置・ソフトウェア
- 全自動多目的X線回折装置 SmartLab SE, SmartLab + 高分解能・高速1次元X線検出器 D/teX Ultra250
- 全自動多目的X線回折装置 SmartLab SE, SmartLab + シームレス多次元ピクセル検出器XSPA-400 ER
- X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II (Powder XRDプラグイン)