2次元検出器を用いた微小角入射広角X線 散乱法による有機薄膜の結晶相同定

    Application Note B-XRD2023

    はじめに

    微小角入射広角X線散乱測定(Grazing Incidence Wide Angle X-ray Scattering、以下GI-WAXSと略す)は、試料表面に広く浅くX線を照射し、膜厚の薄い薄膜試料からの回折X線を効率的に検出する手法です。Apertureスリットを搭載したアタッチメントと2次元検出器を組み合わせると、ライン光学系の汎用X線回折装置でも、回折線が鮮明に分離した2次元回折像が得られます(図1)。

    測定・解析例

    有機エレクトロニクス材料として利用されているペンタセンは、膜厚が薄い場合、バルクとは異なる薄膜特有の結晶相(薄膜相)が成長することが知られています。図2に膜厚50 nmのペンタセン膜のGI-WAXS像(入射角度0.12˚、露光時間30分)を示します。GI-WAXS像の縦軸方向には膜厚方向の周期構造によるスポット状の回折線が観測されました。これらの回折線はペンタセン001及び002反射に帰属されましたが、ペンタセンのバルク相と薄膜相のc軸長は互いに近いため、001, 002反射からでは結晶相の区別がつきません。
    GI-WAXS像の横軸に近い領域には、面内方向の周期構造も含む回折線が現れます。図3に、図2内に点線で示した領域の拡大図と、ペンタセンのバルク相と薄膜相の結晶構造に基づく逆格子シミュレーションを示します。シミュレーションとの比較から、これらの回折線は薄膜相に由来することがわかりました。

    2次元検出器を用いたGI-WAXS測定模式図

    図1 2次元検出器を用いたGI-WAXS測定模式図

    50nm厚さのペンタセン薄膜のGI-WAXS像

    図2 50nm厚さのペンタセン薄膜のGI-WAXS像

    ペンタセンバルク相と薄膜相の逆格子シミュレーション (001配向) および GI-WAXS像の拡大図

    図3 ペンタセンバルク相と薄膜相の逆格子シミュレーション (001配向) および GI-WAXS像の拡大図

    参考文献:    S. Kobayashi and K. Inaba: Rigaku Journal (English version), 32(2) (2016), 1-5.

    推奨装置

    • 全自動多目的X線回折装置 SmartLab + 2D-SAXS/WAXSアタッチメント
      + ハイブリッド型多次元ピクセル検出器 HyPix-3000

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