TG-DTAとXRD-DSCを用いた原薬の脱水挙動の観察
Application Note
B-XRD1128
はじめに
水和物は結晶水を取り込んで結晶構造を保っており、結晶水を失うことで結晶構造が変化したり、非晶質化したりします。結晶構造と物性には相関があり、このような化合物の品質を管理する上で、湿度変化による挙動を把握することが重要です。TG-DTAで水和物を加熱しながら試料の重量減量を測ることで、脱離した水の量がわかります。また、XRD-DSCで水和物を加熱しながらX線回折測定すると、脱水温度や脱水後の状態を調べることができます。ここではTG-DTAとXRD-DSCを用いて、水和物原薬の脱水挙動を調べました。
測定・解析例
抗アレルギー薬のネドクロミルナトリウム(以下、NS)には、非晶質、無水物、一、三水和物等が存在することが知られています。図1にはNS三水和物のTG-DTA測定結果を示します。原薬1分子に対して、TG-DTAにおける最初の重量減少は水2分子分、次の重量減少は水1分子分に相当することがわかりました。
図1 NS三水和物のTG-DTA測定結果
図2にはN2ガス(27 ̊C、 3 %RH)雰囲気下で測定したNS三水和物のXRD-DSC測定結果を示します。TG-DTAの重量減少に相当する70 ̊C付近と、次の重量減少に相当する170 ̊C付近の吸熱ピークの前後で、XRDプロファイルが変化しました。TG-DTAとXRD-DSCの結果から、最初の変化は三水物から一水和物への結晶相転移、次の変化は一水和物から無水物へ結晶相転移であることがわかりました。
図2 NS三水和物のXRD-DSC同時測定結果
試料ご提供: 東邦大学 寺田 勝英 先生
推奨装置・ソフトウェア
- 全自動多目的X線回折装置 SmartLab + X-rayDSC
- SmartLab Studio II (XRD-DSCプラグイン)