水素ガス雰囲気下での燃料電池材料の 結晶子サイズと粒径分布の評価

    Application Note B-XRD1078

    はじめに

    燃料電池は、燃料極、固体膜、空気極が一体化した膜/電極接合体と、ガスケットやセパレーターで構成されるセルを複数個つなげたものです。燃料極では水素やメタノールが供給され、触媒反応によりプロトンと電子に分解されます。この反応では触媒としてカーボンに担持したPtナノ粒子を用いますが、Pt触媒の平均粒径の増大が燃料電池の劣化に強く関係していることが知られています。ここでは、赤外線加熱高温装置を用いて水素雰囲気下でX線回折プロファイルをその場観察し、Ptナノ粒子の結晶子サイズを評価しました。加えて、水素導入前後でPtナノ粒子のX線小角散乱プロファイルを測定し、平均粒径とその粒径分布を調べました。

    測定・解析例

    赤外線加熱高温装置Reactor Xに水素を導入しながら測定したPtナノ粒子(粒径2~3 nm、濃度約40 mass%)のX線回折プロファイルの変化(図1)と、水素導入前後のX線小角散乱プロファイル(図2)を示します。回折プロファイルの半値幅から水素導入による結晶子サイズを見積もったところ、2.2 nmから3.1 nmまで成長したことがわかりました。一方小角散乱プロファイルからは、水素導入前後で平均粒径が2.8 nmから3.1 nmに変化していることがわかりました。これらの結果から、水素導入前のPtナノ粒子は薄いPt酸化被膜で覆われており、水素導入に伴い酸化被膜が金属Ptに還元され、結晶子サイズとともに平均粒径が増加したものと考えられます。以上のように、赤外線加熱高温装置を用いると、ガス導入による回折プロファイル変化をその場で観測でき、1nm以下の結晶子サイズの変化を評価することが可能です。さらに、小角X線散乱測定と組み合わせると、平均粒径と結晶子サイズとの統合解析が可能です。

    水素導入によるX線回折プロファイルの変化Ptナノ粒子の結晶子サイズの変化

    図1 水素導入によるX線回折プロファイルの変化Ptナノ粒子の結晶子サイズの変化

    水素導入前後の小角散乱プロファイルとPtナノ粒子の粒径分布解析結果

    図2 水素導入前後の小角散乱プロファイルとPtナノ粒子の粒径分布解析結果

    参考文献: H.Yashiro,17th Fall Meeting The Ceramic Soc. Jpn., 2P60(2004) 

    推奨装置・ソフトウェア

    • 全自動多目的X線回折装置 SmartLab SE
    • 全自動多目的X線回折装置 SmartLab
    • 赤外線加熱高温装置 Reactor X
    • X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II (Powder XRDプラグイン、MRSAXSプラグイン)

    お問合せ

    製品選びから据付後の技術サービスまで、何でもお気軽にお問合せください。