RMC法
RMC法について
Reverse Monte-Carlo RMC 法は、R. L. McgreevyとL. Putzaiらによって報告された実測値を再現する構造モデルを探査する手法であり、当初は液体や非晶質の構造探査手法としてよく使われていました1)。 しかし、A. Mellergård とR. L. McgreevyによってRMCPOW法2) 、 M. G. TuckerらによってRMCProfile法3) が報告されてから結晶性材料の局所構造解析にも盛んにRMC法が使われるようになりました。 結晶性材料のPDF解析のツールとして広く知られているPDFFIT 4) や PDFgui 5) は実測値のG(r) を再現するために単位格子を使用することから”Small Box Simulation”と呼ばれています。 一方、RMCでは実測値を再現に大きな計算ボックスを必要とするため”Large Box Simulation”と呼ばれています。
なぜRMC法を使うのか?
RMC法を使うことで、実測値から得られない実空間情報: 1. 構造モデル、2. 部分相関、3: 角度ヒストグラムなどの情報が得ることができます。
RMC法による構造モデリングの概略図
基本的なRMC法の計算の流れ
RMC法を知るうえで重要な式は2つあります。初めに式1に示すのは原子配置から散乱強度を計算する式で、
\begin{equation}S_{RMC}(Q)= \rho_0 \displaystyle \nonumber \int_0^{r_{max}}4πr^2(g_{RMC}(r)-1)\frac{\sin{Qr}}{Qr}dr \end{equation}
ここで、$\rho_{0} = N/V$ は数密度 ($N$: 計算ボックス内の原子(粒子)の個数、$V$: 計算ボックスの体積、$r_{\max}$: RMC法での最大の計算距離(一辺$L$の立方体の計算セルなら、$r_{\max} = L/2$)、$Q$は散乱ベクトルです。)
式2に示すのは実測値と計算値から構造モデルを評価する式で、
\begin{equation} x^2 = \displaystyle \nonumber \sum_{i=1}^{N} \frac{(S_{\mathrm{obs}}(Q_i)- S_{\mathrm{RMC}}(Q_i))^{2}}{\sigma^{2}(Q_i)}\end{equation}
RMC法の計算中の試行は全て乱数により制御されています。
- 移動させる原子(または粒子)をランダムに選択し、微小移動量を生成します。
- 移動後の原子配置から計算値(S(Q)またはG(r))が実測値とのカイ2乗値が
●小さくなる: 1の試行を採択
●大きくなる: 1の試行を棄却 - 1, 2の手順をカイ2乗値が目標値を下回るまで繰り返し実行します。
実際のRMCの計算の様子
RMC法実行時のS(Q)、G(r)と構造モデルの変化
参考文献:
[1] R.L. McGreevy, L. Pusztai, Molec. Simul. 1 (1988) 359-367. doi: 10.1080/08927028808080958