アプリケーションノート B-XRD1162
はじめに
高分子フィルムの延伸工程は、製品の機械特性や光学特性に大きな影響を及ぼします。特に、延伸に伴う分子配向や結晶化度の変化をリアルタイムで評価することは、材料設計やプロセス最適化において重要です。広角X線回折法(Wide-Angle X-ray Scattering; 以下 WAXS, ここではWide-Angle X-ray Diffraction; WAXDと同義)は、高分子材料の結晶構造や配向、結晶化度を非破壊で評価できる手法です。高輝度X線と高速・高分解能2次元検出器を組み合わせたWAXS測定を用いることで、延伸過程における結晶化の進行や配向の変化を時分割で追跡し、高分子の構造と物性の関係を明らかにすることが可能です。本アプリケーションノートでは、ポリエチレン(Polyethylene; 以下PE)フィルムの延伸過程に伴う構造変化をその場観察(in-situ)で評価した結果を紹介します。
測定・解析例
PEフィルムを、延伸倍率1倍から3.22倍まで、延伸速度0.1 mm/sで延伸しながら、2次元回折像を1秒間隔で連続測定しました。延伸制御にはLinkam製 MFSを使用し、試料は水平方向に設置して一軸延伸条件で測定を行いました。取得した2次元回折データを円環平均して1次元プロファイルに変換し、その代表的な結果を図1に示します。
延伸倍率1倍から3.22倍まで延伸していくと、1倍では結晶の向きがほぼ無配向状態であるのに対し、2.48倍では一軸配向状態へと変化し、それ以降は配向状態に大きな変化がないことが確認できます(図1)。このように、延伸過程において、延伸倍率に応じた配向状態の変化を捉えることができ、高速測定によってこれらの挙動を実験室レベルで再現可能であることが示されました。
図 1 等温延伸時のPEフィルムの1秒毎の構造変化を高速時分割測定結果
まとめ
以上のように、高輝度の広角X線回折装置と延伸ステージを組み合わせることで、PEフィルムの異なる延伸倍率における配向状態の変化を、1秒オーダーの時間分解能でin-situ評価できることを示しました。本手法は、高分子フィルムの加工条件検討や材料開発における構造–物性相関の解明に有用です。
推奨装置・ソフトウェア
- 広角X線回折装置 DicifferX WAXS Edition + ハイブリッド・フォトン・カウンティングX線検出器 HyPix-6000
- Linkam 延伸加熱ステージ MFS
- X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II (Powder XRDプラグイン)