アプリケーションノート B-XRD1152
はじめに
Rietveld法による多成分系試料の定量分析は、試料中に存在する結晶相の構造情報を利用して各相の含有量を求める手法であり、検量線作成を必要としないことから、研究開発や品質管理の場で広く使用されています。Rietveld解析を行うには、例えば、20-90° /2θ程度の広範囲の回折パターンが必要です。多成分系試料を同時に定量するRietveld解析において、微量成分の定量精度を向上させるには、全範囲をより時間を掛けて測定する必要がありました。ここでは、通常であれば総測定時間を増やす必要があるところ、「部分積算測定」を適用することで測定時間を増やすことなく、Rietveld法を用いて多成分系粉末試料中の微量成分の定量精度向上を検討しました。
測定・解析例
図1に部分積算測定のイメージ図を示します。部分積算測定では、①全範囲の回折パターンを測定した後、②微量成分由来の回折ピークのみを部分測定します。その後、①と②のデータを加算し(➂)、③のデータを測定時間で規格化します(④)。このように、部分積算測定では、全範囲の回折パターンとは別に、微量成分由来の回折ピークを含む角度領域を積算し、短時間で微量成分由来の回折ピークの統計変動を抑制することにより、定量精度の向上を図ります。
図1: 部分積算測定のイメージ図
部分積算測定の効果を明らかにするため、チタン酸バリウムに微量含まれる炭酸バリウムに対して通常測定と部分積算測定を行い、Rietveld解析による定量精度を評価しました。いずれの測定方法も合計測定時間は10分としました。通常測定では全範囲の回折パターンを10分で、部分積算測定では全範囲の回折パターンを4分30秒、BaCO₃ 200と220の回折ピークを含む角度領域を5分30秒で測定しました(図2)。表1に、両測定における炭酸バリウムの定量結果を示します。10回繰り返し測定(n = 10)において、炭酸バリウムの定量値の標準偏差が0.06 mass%から0.03 mass%へ低減しました。この結果から、部分積算測定を用いることで、総測定時間を増加させることなく微量成分の定量精度向上が確認されました。
図2: 通常測定と部分積算測定によるX線回折パターン
※縦軸にオフセットをかけています。
表1: 炭酸バリウムの定量値(mass%)精度の比較(n = 10)
推奨装置・ソフトウェア
- デスクトップX線回折装置 MiniFlex + 高速1次元X線検出器 D/teX Ultra2
- 小型X線回折装置 MiniFlex XpC + 高分解能・高速1次元X線検出器 D/teX Ultra250
- 全自動多目的X線回折装置 SmartLab SE + 高分解能・高速1次元X線検出器 D/teX Ultra250
- 全自動多目的X線回折装置 SmartLab + 高分解能・高速1次元X線検出器 D/teX Ultra250
- X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II (XRD Measurement・Powder XRDプラグイン)