アプリケーションノート B-TA1077
はじめに
石灰石(limestone)は主成分として炭酸カルシウム(CaCO₃)を含む代表的な鉱物資源であり、鉱業および資源処理分野では焼成(カルシネーション)工程により酸化カルシウム(CaO)を製造する原料として広く利用されています。石灰石は加熱により脱炭酸反応を起こし二酸化炭素を放出しますが、その反応温度および反応量は、鉱石品質評価やプロセス設計において重要な指標となります。
本アプリケーションでは、熱重量測定(TG)および示差走査熱量測定(DSC)を同時に行うTG-DSC法を用いて、石灰石中の炭酸カルシウムの熱分解挙動を評価しました。
測定・解析例
測定試料には、石灰石由来の炭酸カルシウム粉末を用いました。試料量は10mgとし、大気雰囲気(Air 200 mL/min)下で、昇温速度10℃/minにて室温から850℃まで加熱しました。TG-DSC測定により、試料の重量変化および吸発熱挙動を同時に取得しました。
図 1 TG-DSC測定結果
TG曲線では、約550℃付近から明確な減量が観測され、DSC曲線には同一温度域において吸熱ピークが確認されました。この挙動は、石灰石中の炭酸カルシウムが脱炭酸反応を起こし、酸化カルシウムと二酸化炭素を生成する反応に対応しています。
CaCO₃ → CaO + CO₂↑
TG曲線における減量率は約44%であり、炭酸カルシウムの分子量比から算出される理論値と一致しました。この結果から、本測定条件下では、石灰石中の炭酸カルシウムがほぼ完全に脱炭酸反応を起こしていることが確認されました。また、DSC曲線の吸熱ピーク面積から、脱炭酸反応に伴う反応エネルギー量は約1500 J/gと見積もられました。
TG-DSC測定により、石灰石中の炭酸カルシウムの脱炭酸反応を、重量変化および反応エネルギーの両面から定量的に評価できることが示されました。本手法は、鉱業分野における石灰石の品質評価、焼成条件の検討、ならびにプロセス設計に有効であると考えられます。