マテリアル・ライフサイエンスのためのX線CTシリーズ #6. X線CTによる地質試料の非破壊観察と数値解析

概要:
空隙率の算出や孔隙ネットワークの解析などの地質試料分析において、X線CTは欠かせないツールとなっています。

例えば、岩石の観察に用いられるSEMや偏光顕微鏡では試料表面しか観察できず、さらに試料の薄片化のため、加工する必要があります。また、内部の孔隙を調べる水銀圧入法は、水銀が有毒で試料が汚染されるため、他の分析手法と組み合わせにくい問題があります。

一方でX線CTは地質試料内部の3次元構造を非破壊観察・数値解析でき、他の分析手法と組み合わせて包括的な分析を行うことが出来ます。

シリーズ第6回となる本webinarでは、X線CTの活用において気を付けるべきポイントやX線CTの利用例をご紹介します。

このセミナーで学べること:
・X線CTによる観察・解析の対象となる地質試料
・X線CT撮影の課題とその解決方法
・地質試料に対するX線CTの利用例

こんな方におすすめ!
・X線CT未経験~初心者の方
・地質試料の3次元構造観察や数値解析にご興味のある方

Q&A:

Q1: 金属フィルターでビームハードニングを抑制するとのことでしたが、低エネルギー成分をカットすることによるデメリットは無いのでしょうか。

A: 低エネルギーのX線をカットすると、低密度の成分(例えば樹脂や食品など)が見えにくくなることがあります。これは、これら低密度の成分に対する高エネルギーのX線の透過力が高いためです。その結果、CT画像上での低密度成分と空気の色の差(コントラスト)が出にくくなります。

 

Q2: 同じシステムでのSEMやEDXとの併用は不可能でしょうか。

A: 撮影と同時にSEMやEDXを測定することはできません。しかし、CTは非破壊の分析手法のため、CTの撮影前後にこれらの測定を行うことは可能です。

 

Q3: ガラス越し(ガラスに入っている試料)などの解析も可能でしょうか。

A: まず、X線はガラスを透過するため、ガラスに入った試料を撮影できます。 次に、解析も可能ですが、よりよい解析結果を得るためには、撮影条件の工夫が必要な場合があります。これはガラスによるX線の減衰、ビームハードニングの影響を避けられないためです。この影響は、特にガラスに低密度の試料を入れて撮影する場合に大きくなります。 もし、具体的なお困りごとがございましたら、弊社ウェブサイトの[専門家に相談する]ボタンよりご相談ください。

 

Q4: 不活性ガス雰囲気で測定できますでしょうか?

A: 装置内を不活性ガスで満たすことはできませんが、ラミネートなどの密封容器に不活性ガスと試料を入れれば、不活性ガス雰囲気で撮影することができます。

 

Q5: CTで液体を撮影するのは難しいと聞いたのですが、間隙水と油の測定は何か工夫があるのでしょうか?

A: CTで液体を撮影するのが難しいのは、撮影中に液体が動いてしまい画像がブレてしまうからです。今回のように、粒子間に充填された液体は、試料の動きにほとんど影響を与えないため、撮影可能です。さらに、今回の画像は短時間で撮影しており、動きの影響を最小限に抑えています。

 

Q6: 拡散解析は例があるか?

A: 現在、弊社にはCTデータを利用した熱伝導性や、分子拡散性等のアプリケーション例はございません。

 

Q7: X線CTでの配向解析において測定上の注意やテンソルの取扱について注意するべき点を教えてください。

A: 注意すべき点は撮影と解析で1点ずつあります。

  • 撮影で注意すべき点 繊維の形状を明瞭に抽出できる分解能で撮影することです。画素サイズは繊維径よりも十分に小さくする必要があります。また、繊維が密集している場合は、繊維間の距離を考慮して分解能を決める必要があります。
  • 解析で注意すべき点 試料の軸と解析ソフト内の座標軸の位置合わせです。多くの場合、データ読み込み時点でこの2つが一致していないため、正確な評価のために位置合わせを行う必要があります。

 

Q8: CFD解析と異なるか?

A: X線CTの解析ソフトでもCFD解析のような解析ができ、撮影したボリュームデータをそのまま使用できます。 一般的なCFD解析ソフトを使用する場合は、ボリュームデータをSTL等に変換する必要があります。 X線CTを使用することで、より実際の形に近い系でシミュレーション可能と考えられます。

 

Q9: ポアサイズはどの程度の分解能ですか?0.01µm程度のものは測れますか?水銀ポロシメータの代替となりますか?

A: 一般に、X線CTの分解能は数μmオーダーのため、0.01 μmオーダーの空隙は困難です。

 

Q10: 回折や散乱によるコントラスト変化で、取得像の結果が大きく変わることはありますでしょうか?

A: 連続X線を用いるCT装置では、基本的にこれらの影響はありません。

 

Q11: 過去のWebinarは見れるのでしょうか?

A: 下記URLよりご覧いただけます。会員登録は不要です。

 

Q12: 金属フィルターの金属種類が多いですが、用途に関してご教授ください。

A: 密度が高く、厚い金属フィルターを使用すると、メタルアーチファクトやビームハードニングなど、X線の透過力に起因するアーチファクトを軽減できます。しかし、X線強度は大きく減衰し、最適な撮影時間が長くなる場合があります。 アーチファクトの軽減を優先される場合は、高密度もしくは厚めのフィルターを選択します。逆に撮影時間を優先される場合は、低密度もしくは薄めのフィルターを選択します。 電圧設定とフィルターの選び方については、こちらのブログも合わせてご覧ください。

https://rigaku.com/products/imaging-ndt/x-ray-ct/learning/blog/how-to-choose-kv-and-filter-for-your-micro-ct-experiment

お問合せ

製品選びから据付後の技術サービスまで、何でもお気軽にお問合せください。