NEX QC による ACZA 防腐処理木材の分析

Application Note XRF3033

NEX QCによるACZA防腐処理木材の分析

はじめに

木材の防腐処理は菌類、害虫、紫外線ダメージや磨耗などから木材を保護するために行われます。一般的に用いられる木材保存剤には、銅化合物やアンモニウム化合物、CCA(クロム-銅-ヒ素系化合物)、ACZA(アンモニア性銅-亜鉛-ヒ素系化合物)などがあります。ACZAはヒ素を含有するため、環境への影響から通常は使用されませんが、一部の国・地域において、ベイマツのように他の保存剤では保持が難しい木材への処理に利用されることがあります。防腐処理を行う際、高品質を保ち、かつ無駄なく余分なコストを最低限に留めるために、処理薬液の濃度をモニターしておく必要があります。銅、亜鉛、ヒ素の濃度は、処理前の薬液および処理後の木材においてモニターされ、適切に処理されたことを確認します。エネルギー分散型蛍光X線分析装置 NEX QC(ネックス・キューシー)は、シンプルな操作で簡単にこれらの成分の濃度を分析でき、最小限のコストで信頼性の高い品質管理を行うことができます。 今回はACZA処理木材、および処理薬液中の銅、亜鉛、ヒ素の分析を紹介します。

試料調製

木材試料は均一な粉末になるまで粉砕し、乾燥しました。その後32 mm径の試料セルに5 g程度投入して ルースパウダー法で測定しました。処理薬液試料は、均質性を保つために軽く振とうし、そのまま試料セルに5 g投入して測定に供しました。試料セルはポリエチレン試料容器(Cat.No.CH1330)を、試料フィルムは厚さ6 mのポリエステルフィルム(Cat.No.3399G001)を使用しました。

装置および測定条件

NEX QCの仕様と測定条件を表1に示します。ヘリウムガスは使用せず、測定は大気雰囲気で行いました。

表1 NEX QCの仕様と測定条件

NEX QCの仕様と測定条件

装置本体にはコンピュータとサーマルプリンタを内蔵しており、測定とデータの出力を一台で行えます。操作はタッチパネル方式で非常に簡単です。自動試料交換機(オプション、図1)により効率よく試料を測定することができます。

自動試料交換機

図1 自動試料交換機

分析結果

 (1) ACZA防腐処理木材の分析
標準値のあるACZA処理木材試料6点を用いて酸化銅、酸化亜鉛、五酸化二ヒ素の検量線を作成しました。試料の「標準値」と作成した検量線による「測定値」を表2~4、相関図を図2~4に示します。

表2 木材中CuOの分析結果

木材中CuOの分析結果

標準値と測定値の相関図 (木材中CuO)

図2 標準値と測定値の相関図 (木材中CuO)

表3 木材中ZnOの分析結果

木材中ZnOの分析結果

標準値と測定値の相関図 (木材中ZnO)

図3 標準値と測定値の相関図 (木材中ZnO)

表4 木材中As2O5の分析結果

木材中As2O5の分析結果

標準値と測定値の相関図 (木材中As2O5)

図4 標準値と測定値の相関図 (木材中As2O5)

・木材試料中3成分の再現性確認結果
標準物質のうち、濃度の低い試料と高い試料の2点について、単純10回繰り返し測定を行い、再現性を確認しました。結果を表5にまとめます。いずれも変動係数が1%以下と、非常に良好な再現性が得られています。

表5 木材試料分析時の再現性確認結果
(a) 試料“W-A”

木材試料分析時の再現性確認結果(a) 試料“W-A”

(b) 試料“W-G”

木材試料分析時の再現性確認結果(b) 試料“W-G”

・木材試料中3成分の検出下限(LLD)
作成した検量線による3成分の検出下限を求めました。検出下限は、ブランク試料(処理前の木材)に対して単純10回繰り返し測定を行い、得られた標準偏差の3倍(3σ)で計算しています。

表6 検出下限(LLD)

検出下限(LLD)

(2) ACZA処理薬液の分析
標準値のあるACZA処理薬液試料6点を用いて、酸化銅、酸化亜鉛、五酸化二ヒ素の検量線を作成しました。試料の「標準値」と作成した検量線による「測定値」を表7~9、相関図を図5~7に示します

表7 処理薬液中CuOの分析結果

処理薬液中CuOの分析結果

標準値と測定値の相関図 (薬液中CuO)

図5 標準値と測定値の相関図 (薬液中CuO)

表8 処理薬液中ZnOの分析結果

処理薬液中ZnOの分析結果

標準値と測定値の相関図 (薬液中ZnO)

図6 標準値と測定値の相関図 (薬液中ZnO)

表9 処理薬液中As2O5の分析結果

処理薬液中As2O5の分析結果

標準値と測定値の相関図 (薬液中As2O5)

図7 標準値と測定値の相関図 (薬液中As2O5)

・処理薬液中3成分の再現性確認結果
標準物質のうち、濃度の低い試料と高い試料の2点について、単純10回繰り返し測定を行い、再現性を確認しました。結果を表10に示します。こちらも、いずれも変動係数が1%以下と、非常に良好な再現性が得られています。

表10 ACZA処理薬液の再現性確認結果
(a) 試料“S-A”

ACZA処理薬液の再現性確認結果(a) 試料“S-A”

(b) 試料“S-F”

ACZA処理薬液の再現性確認結果(b) 試料“S-F”

・処理薬液中3成分の検出下限(LLD)
作成した検量線によるACZA処理液の検出下限(LLD)を求めました。検出下限は、ブランク試料に対して単純10回繰り返し測定を行い、得られた標準偏差の3倍(3σ)で計算しています。

表11 検出下限(LLD)

検出下限(LLD)

まとめ

NEX QCを用いてACZA処理木材、処理薬液中の銅、亜鉛、ヒ素の分析を簡便・迅速に行えることを確認しました。NEX QCは低コストで高精度な分析ができ、現場でのスクリーニング分析
に加え、製品の品質保証、品質管理分析にも対応できる非常に有用な装置です。

保持率の出力について

 

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