反射X線トポグラフィによる シリコンカーバイド単結晶基板の転位観察

Application Note B-XRD2033

はじめに

シリコンカーバイド(以下SiC)単結晶基板は高い絶縁破壊電界強度を持つことに加え、これまで多く利用されているシリコンよりもバンドギャップが大きいことから、高速なスイッチング動作と高温条件下でのリーク電流の低減を実現した次世代パワー半導体デバイス材料として注目されています。より高品質なデバイスとするためには単結晶基板内に存在する種々の欠陥の制御が重要です。基板表面近傍にある結晶の乱れに対して感度が高い反射X線トポグラフィでは、単結晶基板表面近傍に存在する転位や積層欠陥の分布状態を可視化することが可能になります。

測定・解析例

結晶欠陥対策としてよく用いられている4度のオフ角がある4インチ4H—SiC単結晶基板について、SmartLabによる反射X線トポグラフィ測定を行い、種々の転位と積層欠陥の観察を行いました。図1にSiC 1 ̅1 ̅28反射(入射角度 ω = 8.9°、回折角度 2θ = 104.7°、波長 1.54186 Å(Cu Kα))のトポグラフを示します。SiCウェーハ中の欠陥(主に転位)のある部位の強度が高くなり、色が濃く表示されることから、その分布状態を確認することができます。図2(左)にはこのウェーハ中央部の拡大図を示しました。貫通らせん転位(TSD)や基底面転位(BPD)などの転位が観測されています。図2(右)は同じ範囲をSiC 0008反射(ω = 33.7°、2θ = 75.6°)を利用して測定した結果です。この反射指数による観測では基底面転位の情報は観測されなくなるため、表面に貫通しているらせん転位のみが明瞭に観測されています。
図3(左)はSiC 1 ̅019反射(ω = 22.0°、2θ = 96.8°)を利用して測定した積層欠陥の様子です。図3(右)には1 ̅1 ̅28反射による測定データの同じ領域を示しています。1 ̅019反射で観測される積層欠陥は1 ̅1 ̅28反射では観測されておらず、目的とする欠陥種の観測には適切な反射指数の選択が必要であることがわかります。

反射トポグラフ

図1 SiC 1 ̅1 ̅28反射トポグラフ
(白色の横縞模様は測定に由来)

図2 ウェーハ中央部の拡大図 SiC 反射(左)とSiC 反射(右)

反射トポグラフによる積層欠陥の観察

図3 SiC 1 ̅019反射トポグラフ(左)による積層欠陥の観察 および SiC 1 ̅1 ̅28反射トポグラフ(右)との比較(斜めおよび横縞模様は測定に由来)

 

推奨装置

  • 全自動多目的X線回折装置 SmartLab + 高感度・高分解能X線カメラ XTOP
  • X線トポグラフイメージングシステム XRTmicron

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