2次元検出器を用いた微小角入射広角X線散乱法によるポリプロピレン製品の配向状態評価

    Application Note B-XRD2032

    はじめに

    微小角入射広角X線散乱法(Grazing Incidence Wide Angle X-ray Scattering method、以下GI-WAXSと略す)は、試料表面に浅くX線を入射し、試料表面近傍からの回折X線を効率的に検出する手法です。GI-WAXSは、基板上の薄膜や、裏面に金属を蒸着した高分子フィルムのように、透過配置による評価が困難な材料に対しても適用可能です。Apertureスリットを搭載したアタッチメントと2次元検出器を組み合わせると、ライン光学系の汎用X線回折装置でも、回折線の分離のよい2次元回折像が得られます(図1)。

    測定・解析例

    ポリプロピレン製梱包テープ、スナック菓子包材、液体調味料包材について、2次元検出器を用いたGI-WAXS測定を行いました。図2に、試料-検出器間距離を65 mm(2θ測定範囲 0~30˚)に設定し、X線入射角度0.2˚、露光時間60秒で観測したGI-WAXS像を示します。(a)では不連続なデバイリングが観測され、試料設置方向φ = 0°と90°で異なるGI-WAXS像が得られました。このことから、梱包テープは高い配向性を持つことが示唆されます。一方(b)と(c)は、デバイリングに強度分布は見られるものの多くは連続しており、試料設置方向による差異が顕著でないことから、(a)と比較して面内方向の異方性が低いと考えられます。

    2次元検出器を用いたGI-WAXS測定模式図

    図1 2次元検出器を用いたGI-WAXS測定模式図


    GI-WAXS像をポリプロピレンの結晶構造に基づく逆格子シミュレーション結果と比較し、結晶配向状態を詳細に検討しました。図3に、図2 (a)(φ = 90˚)のGI-WAXS像を逆空間座標に変換し、シミュレーションした逆格子点と重ねた結果を示します。入力した結晶方位から計算される逆格子点のうち、理論回折強度の高いものを図中に●で示しています。これらの逆格子点の配置が観測結果とよく一致することから、ポリプロピレンのc軸がテープの引き出し方向と平行になるように配向していることが示唆されます。

    GI-WAXS像測定結果

    図2 GI-WAXS像測定結果

    (a)梱包テープ(b)スナック菓子包材 (c)液体調味料包材


    逆格子座標に変換した梱包テープのGI-WAXS像(φ=90 ˚)とシミュレーションした逆格子点との重ね書き

    図3 逆格子座標に変換した梱包テープのGI-WAXS像(φ=90 ˚)とシミュレーションした逆格子点との重ね書き

    推奨装置・ソフトウェア

    • 全自動多目的X線回折装置 SmartLab 2D-SAXS/WAXSアタッチメント
      + ハイブリッド型多次元ピクセル検出器 HyPix-3000
    • X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II (HRXRDプラグイン)

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