インプレーン軸を使用した極点測定による シリサイド薄膜の特殊な繊維配向状態の解析

    Application Note B-XRD2028

    はじめに

    結晶性薄膜の配向状態は、材料の電気・磁気・機械的性質や発光特性などを決定する要素の一つです。一般的な配向状態の様式としては、繊維配向状態やエピタキシャル成長状態が知られています。薄膜材料では、基板の結晶方位や表面処理、成膜方法などによって、配向軸が試料表面法線に対して特定の角度で傾いた、より複雑な配向状態を示すことがあります。ゴニオメーターに搭載したインプレーン軸を使用する極点測定法(インプレーン極点)では、反射法による全極点測定が可能で、膜厚の小さい薄膜の回折信号も得られやすいという特長があり、特殊な配向状態を持つ薄膜材料の評価に有効です。

    測定・解析例

    Si 100ウェーハ上にNiを成膜して加熱処理を行い、厚さ約25 nmのNiSi薄膜を作製しました。図1に、回折角2θ = 47.3 ̊ におけるインプレーン極点測定結果を示します。測定に使用した光学系分解能では、Si 220(2θ = 47.3 ̊ )とNiSi 211(2θ = 47.2 ̊ )の回折信号の両方が検出されます。測定の結果、強度の高いSi {110}の極(α=45 ̊ )と、これらを中心とした複数の同心円状の強度分布を示す、4回対称の極点図が得られました。図2に、NiSi 211がSi {110} 方位に揃って繊維配向していると仮定した場合のNiSi 211 極点図のシミュレーション結果を示します。同心円状の強度分布が実測結果一致することから、これらがNiSiからの回折信号であることがわかりました。
    同心円状のNiSiの回折信号は、極点図の外側(低いα領域)でより明瞭に観測されていました。これは、低いα領域では試料表面に対するX線入射角度が小さいため、薄膜へのX線照射面積が増加することによります。インプレーン極点測定では低いα領域の強度分布を観測し解析に使用できるため、比較的膜厚の小さい薄膜の複雑な配向状態の解析を行うことが可能です。

    NiSi膜 / Si基板試料のNiSi 211インプレーン極点測定結果

    図1 NiSi膜 / Si基板試料のNiSi 211インプレーン極点測定結果

    NiSi 211繊維配向軸がSi {110}方位に揃っていると仮定したシミュレーション結果

    図2  NiSi 211繊維配向軸がSi {110}方位に揃っていると仮定したシミュレーション結果

    推奨装置・ソフトウェア

    • 全自動多目的X線回折装置 SmartLab (インプレーン軸・φ軸搭載) + RxRyアタッチメント
    • X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II (Textureプラグイン)

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