広域逆格子マップによる 面内異方性基板上のエピタキシャル膜の評価
はじめに
特定の結晶方位で成長したエピタキシャル膜を作製するために、m面サファイア基板やSi 110基板、パターン付きウェーハなどの面内異方性基板が利用されています。これらの材料では、エピタキシャル膜の結晶方位や結晶性を基板の方位と関連づけて評価することが重要です。逆空間内の広範囲にわたる強度分布が得られる広域逆格子マップは、エピタキシャル膜の結晶方位、配向性、結晶性の全体的な理解に役立ちます。
測定・解析例
m面サファイア上にGaNを製膜した試料について、直交する2通りのX線入射方位で広域逆格子マップを測定しました(図1)。逆格子シミュレーションとの比較から、サファイア・GaNともにm面(11 ̅00)が試料表面と平行で、面内方向の結晶方位関係は [0001](1100) GaN // [112 ̅0]( 1100) サファイア基板 であることがわかりました。
GaNの回折スポット形状はX線入射方位によって異なり、GaN c軸方向の逆格子マップ(図1右)ではGaN 11 ̅0l回折スポット間にストリークが生じていました。GaN 11 ̅00付近の詳細な逆格子マップを測定したところ、GaN 11 ̅00回折スポットのc軸方向の幅(図2右)は、直交するa軸方向(図2左)に対して有意に広く観測されました。このことから、GaNは結晶状態の面内異方性を持つ(c軸方向にtilt分布が広く、結晶子サイズが小さい)ことがわかりました。
図1 GaN / m-sapphire試料の広域逆格子マップ
左:横軸がsapphire 0001方向 右:横軸がsapphire 112 ̅0方向
図2 GaN 付近の逆格子マップ 左: 横軸がGaN 方向 右: 横軸がGaN 方向
参考文献: S.Kobayashi: XTOP 2018 (The 14th Biennial Conference on High-Resolution X-ray Diffraction and Imaging)
推奨装置・ソフトウェア
- 全自動多目的X線回折装置 SmartLab + ハイブリッド型多次元ピクセル検出器 HyPix-3000
- 全自動多目的X線回折装置 SmartLab SE + ハイブリッド型多次元ピクセル検出器 HyPix-400
- χφ アタッチメント、χφZアタッチメントベース
- X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II (HRXRDプラグイン)