1次元検出器モードを用いた III族窒化物薄膜の高速逆格子マップ測定

    Application Note B-XRD2024

    はじめに

    逆格子マップは、格子面間隔と結晶方位分布を互いに独立に評価する手法であり、エピタキシャル薄膜を中心とした薄膜試料の分析に利用されています。逆格子マップデータは散乱角(2θ)と試料に対する入射角(ω)の組み合わせを変えた複数のスキャンデータで構成されるため、一般に測定に時間を要します。2次元検出器の1D露光モードとω軸の高速スキャンと組み合わせてデータを収集することで、数10秒~数分というごく短時間での逆格子マップ測定が可能です。

    測定・解析例

    サファイア基板上にGaN(15.2 nm) / In0.08Ga0.92N(3.5nm) 多重量子井戸構造(5 周期)を作製した薄膜試料の逆格子マップを測定しました。2次元検出器を長手が2θ方向になる向きで検出器距離300 mmに設置し、ω軸の高速スキャンを行いながら、1D露光モードでデータを収集しました。測定時間30秒のωスキャンで得られたデータを図1に示します。2次元検出器の1D露光モードでは、2θ軸を動かさずに、検出器距離と検出面の長さに応じた2θ測定範囲の回折信号を一度に観測することができます。このため、ωスキャンを行うだけで、逆格子マップを構成するデータの収集が可能です。
    図1のデータを逆格子座標に変換し、結晶相と結晶方位を元に作成したシミュレーションを重ね描きした結果を図2に示します。逆格子マップ上には、サファイア基板及びInGaNの0次反射に帰属される逆格子点と、多重量子井戸構造に起因するサテライトピークが縦に連なる様子が確認されました。
    以上のように、本測定手法では、わずか数10秒~数分の所要時間で、単結晶基板とエピタキシャル層の逆格子点を観測するのに十分な範囲の逆格子マップを測定することが可能です。

    1D露光モードによるω軸の高速スキャンデータ

    図1 1D露光モードによるω軸の高速スキャンデータ

    逆格子マップとシミュレーションの重ね描き

    図2 逆格子マップとシミュレーションの重ね描き

    参考文献: 葛巻貴大, 小城あや: リガクジャーナル, 49 (2) (2018) 20-22. 

    推奨装置とソフトウェア

    • 全自動多目的X線回折装置 SmartLab + ハイブリッド型多次元ピクセル検出器 HyPix-3000
    • X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II (HRXRDプラグイン)

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