2次元検出器を用いた固体酸化物型 燃料電池材料の結晶相・配向状態評価
Application Note
B-XRD2020
はじめに
基板上に製膜された薄膜は、製法・材料によって様々な結晶状態・配向性を示し、通常のX線回折測定では結晶相の同定が困難なことがあります。2次元検出器を用いた回折像では2θ方向の回折強度分布とχ方向の結晶方位の分布が一度に観測されるため、結晶相ごとの格子定数や配向状態の差異を容易に把握することができます。
測定・解析例
図1に、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)単結晶基板上に(La,Sr)(Co,Fe)酸化物(LSCF)を製膜した試料のアウトオブプレーンX線回折(2θ/θスキャン)プロファイルを示します。YSZ, LSCFに帰属されるピークのほかにも回折ピークが観測され(図中↓)、ICDDカードの検索結果から、これらは(La, Zr)酸化物による回折ピークと推測されました。
図2に、2次元検出器を用いて得られたこの試料の回折像を示します。YSZは単結晶に特有のスポット状の回折像を示しました。LSCFは連続的なデバイリングとして観測されたことから、無配向であることが確認されました。 (La, Zr)酸化物と推測されるピーク(図2中↓)はYSZと同様にスポット状の回折像を示しましたが、χ方向の広がりが大きいことから、YSZ基板よりも配向性が低いことがわかりました(図3)。このように、本測定手法では、結晶相ごとの配向状態を容易に確認することが可能です。
図1 アウトオブプレーンX線回折プロファイル(CuKα線で測定) (―)YSZ (―)LSCF (―)(La,Zr)酸化物
図2 2次元回折像(CuKα線で測定)(↓:(La, Zr)酸化物と推測されるピーク)
図3 YSZ 200 反射付近の拡大図と回折スポットのχプロファイルの比較
試料ご提供:産業技術総合研究所 様
推奨装置・ソフトウェア
- 全自動多目的X線回折装置 SmartLab + 微小部測定光学系ユニット CBO-f
+ ハイブリッド型多次元ピクセル検出器 HyPix-3000 - 統合X線分析ソフトウェア SmartLab Studio II (Powder XRDプラグイン)