リートベルト解析によるクリンカー鉱物の 結晶多形の高精度な定量分析
Application Note
B-XRD1147
はじめに
硬化時間や強度などのセメントの性質は、クリンカー鉱物の種類およびその結晶多形の量比によって変化します。クリンカー鉱物の代表的な結晶多形としては、エーライトのM1相とM3相、アルミネートの立方晶系と直方晶系が知られています。結晶多形の量比は、回折パターンの違いに基づいて評価することができるため、Rietveld解析により迅速で簡便に求めることが可能です。セメントの性質を正しく評価するためには、高精度な分析が必要とされます。ここでは、高速1次元検出器を搭載したデスクトップX線回折装置を用いて10回繰り返し測定(1測定5分)を行い、Rietveld解析によるセメント材料の定量分析の精度を評価しました。
測定・解析例
測定には普通ポルトランドセメントを使用しました。Rietveld解析にはX線分析統合ソフトウェアSmartLab Studio IIを用い、結晶構造情報、精密化パラメータ―の初期値、精密化の手順をあらかじめ設定したテンプレートを用いることで複数の測定データを同じ条件で解析しました。表1に各成分の平均定量値と標準偏差(1σ (n=10))を示します。定量値の標準偏差は非常に小さくなりました。このように、テンプレートを用いたRietveld解析は、クリンカー鉱物の結晶多形の高精度な定量分析を可能にします。
図1 Rietveld解析による普通ポルトランドセメントのプロファイルフィッティング結果
表1 普通ポルトランドセメント中の各成分の定量値と標準偏差(単位: mass%, 標準偏差: 1σ(n = 10))
推奨装置・ソフトウェア
- デスクトップX線回折装置 MiniFlex + 高速1次元X線検出器 D/teX Ultra2
- 全自動多目的X線回折装置 SmartLab SE + 高分解能・高速1次元X線検出器 D/teX Ultra250
- 全自動多目的X線回折装置 SmartLab + 高分解能・高速1次元X線検出器 D/teX Ultra250
- X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II (Powder XRDプラグイン)