参照強度比を基準にするリートベルト解析に よる高炉セメント中の高炉スラグの定量分析
Application Note
B-XRD1146
はじめに
近年、環境負荷低減の観点からセメントに混合材を添加した混合セメントが多く生産されています。高炉スラグを添加した高炉セメントは、JIS R5211により高炉スラグの添加量でA種(5%を超え30%以下)、B種(30%を超え60%以下)、C種(60%を超え70%以下)の3種類に分けられます。特に、高炉スラグの添加量が40~45%のB種の高炉セメントが、広く使用されています。高炉スラグは非晶成分であるため、高炉セメントの品質管理のために、標準物質を用いたRietveld解析による高炉スラグの定量分析が行われています。ここでは、非晶成分の含有量が既知の高炉セメントから非晶成分の参照強度比を求め、得られた参照強度比を用いて非晶成分も含めてRietveld解析を行うことにより、標準物質を用いずに高炉セメント中の高炉スラグを定量しました。
測定・解析例
高炉セメント試料はポルトランドセメントに高炉スラグを添加し作製しました。異なる混合比に調製した各高炉セメント試料は、高速1次元X線検出器を搭載したデスクトップX線回折装置を用いてそれぞれ5分で測定しました。図1に高炉スラグを40%混合した高炉セメントのRietveld解析結果を、表1に各試料の高炉スラグの定量分析値を示します。高炉スラグの添加量40~45%の範囲において、高炉セメント中の高炉スラグの定量値は絶対誤差で±1%以下となり、正確な定量分析を行うことができました。
図1 Rietveld解析による高炉セメントのプロファイルフィッティング結果
表1 高炉セメント中の非晶成分の定量値
番号 | 試料1 | 試料2 | 試料3 |
調製値 (mass%) | 40.0 | 42.5 | 45.0 |
定量値 (mass%) | 40.3 | 42.2 | 45.4 |
推奨装置・ソフトウェア
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