気密試料ホルダーを用いた吸湿性製剤の測定
はじめに
一般的な医薬品製剤は、吸湿性や潮解性などを有します。そのため大気下で、一般的な試料ホルダーに充填して測定を行うと、測定中に大気中の成分との反応により結晶構造が変化し、材料本来のX線回折プロファイルが得られない可能性があります。今回は、気密状態でX線回折測定が可能なASC用気密試料ホルダーを使用し、吸湿性を有するレボカルニチン製剤を測定した例を紹介します。
測定・解析例
図1に示すように、レボカルニチン製剤をASC用気密試料ホルダーに充填しました。充填後は、一般的な試料ホルダーと同じように、ASCアタッチメントに載せるだけで気密状態での測定が実施できます。
図1 (a)ASC用気密試料ホルダー (b)取り付け例
無反射試料ホルダーとASC用気密試料ホルダーを用いて、レボカルニチン製剤を測定した結果を図2に示します。どちらもアルゴン雰囲気下のグローブボックスで試料充填を行い、図2(a)は無反射試料ホルダーを用いて大気下で、(b)はASC用気密試料ホルダーを用いてアルゴン雰囲気下で測定した結果になります。
大気下測定(a)では、充填直後はレボカルニチン製剤の有効成分であるL型カルニチンの回折ピークが確認されましたが、27時間後には、その回折ピークの消滅が確認されました。この原因として、測定中に大気中の成分と反応し、非晶化したことが考えられます。またL型カルニチン以外の回折ピークも確認され、これは充填直後に大気中の成分と反応した賦形剤由来であると考えられます。一方アルゴン雰囲気下測定(b)では、L型カルニチンの回折ピークは42時間後でも変化せず、また賦形剤由来の回折ピークも確認されず、充填直後の結晶構造を維持しました。このように気密試料ホルダーを用いることで、大気中の成分の影響を受けずに高い気密状態で安定した測定が可能です。
図2 レボカルニチン製剤のX線回折プロファイル
(a)無反射試料ホルダー(大気下)(b)ASC用気密試料ホルダー(アルゴン雰囲気下)
推奨装置・ソフトウェア
- 全自動多目的X線回折装置 SmartLab + ASC-6アタッチメント + ASC用気密試料ホルダー