FP法で求めた結晶子サイズの妥当性の検証
はじめに
結晶子とは、X線回折に寄与する最小単位で、結晶粒の中で単結晶して見なせるドメインと定義されています。工業製品などで、化学的性質や物性が結晶子サイズと相関があることが知られており、結晶子サイズを正確に計測することは非常に重要です。X線回折プロファイルから結晶子サイズを求める方法としては、Scherrer法・Williamson-Hall法・FP(Fundamental Parameter)法などがあります。中でもFP法は、使用した光学系の情報から回折ピークの幅を補正することができるので、正確度の高い結晶子サイズとその分布を算出することが可能となります。本例では、FP法での結晶子サイズ算出と他手法との比較を行い、値の妥当性を検証しました。
測定・解析例
ルチル型のTiO2粉末試料を、1次元検出器を用いた集中法光学系にて測定しました。結晶子サイズ解析にはFP法を使用しました。また他手法との比較のため、SEM(走査電子顕微鏡)、LD(レーザー回折法)、USAXS(超小角X線散乱法)でも同様に測定を行いました。SEMはJEOL製JSM-64060LV、LDはBECKMAN COULTER製LS 13 320、USAXSは当社製NANOPIX miniを使用しました。
SEMで得られた写真から、TiO2粒子は1次粒子(結晶子(単結晶))に近いことが推測されました(図1)。またLD、USAXSから得られた平均粒子サイズは189 nm・190 nm、メジアン粒子サイズは164 nm・160 nmでした(表1)。一方、XRD(FP法)から、平均結晶子サイズが186 nm、メジアン結晶子サイズが168 nmとなり、他手法に近い値が算出されました(表1)。
併せて、各手法から得られた累積度数分布を図2に示します。本結果から、TiO2の1次粒子は、他の測定手法と相関のある結果が得られ、FP法から求まる結晶子サイズの正確度は高いことが確かめられました。
図1 TiO2粒子のSEM画像
図2 TiO2粒子の各手法から求めた累積度数分布
表1 各手法から求めたTiO2粒子の粒子・結晶子サイズ
手法 |
平均サイズD (nm) | メジアンサイズ D50 (nm) |
LD | 189 | 164 |
USAXS | 190 | 160 |
XRD (FP method) | 186 | 168 |
参考文献
(1)中井泉, 泉富士夫: 粉末X線解析の実際 第2版, (朝倉書店, 2009) 61-64.
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