X線回折法によるう蝕歯の結晶状態の評価

Application Note B-XRD1122

はじめに

結晶性物質は、骨や歯など私たちの体の中にも存在しています。それらの結晶状態は、機能的な理由や健康・栄養状態が影響することが考えられます。ここでは、結晶性の生体試料として、う蝕部を有するヒトの歯(親知らず)のX線回折法によるマッピング測定を行い、部位ごとの結晶状態の違いを評価しました。

測定・解析例

試料は測定面が比較的平坦になるように研磨しました(図1)。本測定では、X線をφ 0.1 mm(直角入射時)に集光する集光光学素子と2次元検出器を用いて、一方向にラインマッピングを行いました(図2)。エナメル質、う蝕部、象牙質の2次元回折像と1次元変換プロファイルを図3に示します。エナメル質(図3(1))と象牙質(同(3))のプロファイルを比較すると、同定された化合物はどちらもハイドロキシアパタイトであるものの、回折線のピーク幅が異なっており、エナメル質のほうが象牙質よりも幅が狭いことがわかりました。このことから、結晶性(結晶が秩序良く配列しているかの程度)はエナメル質のほうが高いことがわかりました。う蝕部(同(2))の同定化合物もハイドロキシアパタイトですが、低角側に非晶質に起因するハローが観測されました。これは虫歯の酸によりハイドロキシアパタイトが溶かされ、非晶質になったことを示しています。このようにX線回折法では化合物の同定に加えて、結晶性や非晶質の有無も確認することができます。

ヒトの歯の構造

図.1 ヒトの歯の構造

 

試料画像とマッピング箇所

図2 試料画像とマッピング箇所

 ナメル質、う蝕部、象牙質の2次元回折像、1次元変換プロファイル、および定性分析結果

図3 エナメル質、う蝕部、象牙質の2次元回折像、1次元変換プロファイル、および定性分析結果

推奨装置・ソフトウェア

  • 全自動多目的X線回折装置 SmartLab + 微小部測定光学ユニットCBO-µ
    + ハイブリッド型多次元ピクセル検出器 HyPix-3000
  • X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II (Powder XRDプラグイン)

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