DD法による医薬品原薬の定量分析

    Application Note B-XRD1120

    はじめに

    医薬品原薬に代表される有機化合物は分子配列の対称性が低い結晶構造をとる場合があり、X線回折プロファイルには数十本のピークが観測されます。このような有機化合物の混合物に対して、X線回折ピークの分離は難しく、ピークの積分強度(面積)から重量分率を算出する定量分析は困難です。当社が開発した新しい定量分析法;Direct Derivation法(DD法) (1)(2)では、単一結晶相のX線回折プロファイルを元に定量値を算出することから、混合相のピーク分離精度が向上し、複雑なプロファイルを示す化合物の定量も容易です。ここでは原薬となる化合物を例に、微量結晶多形の定量分析を行いました。

    測定・解析例

    カルバマゼピン(以下、CBZ)にはI型(空間群:P21 / n)とIII型(空間群:P-1)の結晶多形が存在します。図1にCBZの I型とIII型のX線回折プロファイルの多重書きを示しました。I型とIII型ではピークの重なりが多いことがわかります。  I型に対して1.00 mass%のIII型を混合し、2θ = 3~120˚を10˚/min (1測定約12分)で測定しました。図2に、得られたX線回折プロファイルに対する計算プロファイルの精密化結果を示します。結晶の選択配向の影響によりRwp値は高いものの、III型の調製値1.00 mass%に対して定量値0.99±0.09 mass%が得られました。

     CBZ I型とIII型のX線回折プロファイルの多重書き

    図1 CBZ I型とIII型のX線回折プロファイルの多重書き

     CBZ混合物の精密化計算結果

    図2 CBZ混合物の精密化計算結果 (調製値 : I型99.00 mass%、III型1.00 mass%)

    参考文献:(1) H. Toraya: J. Appl. Cryst., 49 (2016) 1508-1516.
                          (2) H. Toraya: J. Appl. Cryst., 50 (2017) 820-829.

    推奨装置

    • 全自動多目的X線回折装置 SmartLab + ASC-10 + 高分解能・高速1次元X線検出器 D/teX Ultra250
    • X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II (Powder XRDプラグイン)

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