ポリマーフィルムの配向係数を用いた材料評価
はじめに
ポリマーは一般的に半結晶材料で、炭素による直鎖構造を有しています。XRDではポリマーの相同定、結晶化度、結晶子サイズ、結晶方位を解析可能です。ポリマーの特性は熱処理や成形過程に影響されます。特にc軸に着目した結晶方位やその配向の程度を評価することにより、ポリマーフィルムにもたらされた応力と歪を予測できます。配向の評価手法として、透過2θ/θ配置におけるβスキャンがよく行われますが、透過・反射極点測定から得られる全極点図を用いると、より詳細に結晶方位や配向の程度を知ることができます。また、全極点図から計算されるHermanの配向係数(1),(2)を用いると、その試料の結晶方位や配向性を”数値”で評価することが可能です。
測定・解析例
反射極点測定でαを変化させるときはχ軸を用いますが、透過極点測定でαを変化させるには図1のようにω軸を使用します。図2に2軸延伸ポリプロピレン(以下、PP)フィルムの極点図を示します。透過極点は極点図の外周付近、反射極点は極点図中心付近の情報が得られます。図2の透過・反射極点図を、バックグラウンド補正や吸収補正により接続した全極点図が図3(b)になります。表1に1軸延伸PPと2軸延伸PPの配向係数を示します。配向係数は着目する格子面法線やa,b,c軸がND,RD,TDのどの方向に多く向いているかを数値で表しています。1軸延伸PPのc軸はRDに、2軸延伸PPのc軸はTDに多く向いていることが分かります。この配向係数値と試料の特性をリンクさせて評価することが可能です。
図1 透過極点測定の装置構成
図2 2軸延伸PPフィルムの110, 040極点図(a)透過極点図(b)反射極点図
図3 PPフィルムの110, 040全極点図(a)1軸延伸PP (b)2軸延伸PP
表1 図3から計算された配向係数(a)1軸延伸PP (b)2軸延伸PP
(a) | ND | RD | TD |
{0 4 0} | 0.406 | 0.079 | 0.516 |
{1 1 0} | 0.555 | 0.032 | 0.414 |
a 軸 | 0.382 | 0.105 | 0.513 |
b 軸 | 0.555 | 0.032 | 0.414 |
c 軸 | 0.054 | 0.885 | 0.061 |
(b) | ND | RD | TD |
{0 4 0} | 0.596 | 0.249 | 0.155 |
{1 1 0} | 0.312 | 0.476 | 0.212 |
a 軸 | 0.280 | 0.493 | 0.227 |
b 軸 | 0.596 | 0.249 | 0.155 |
c 軸 | 0.120 | 0.252 | 0.628 |
参考文献:(1) P.H. Hermans and P. Platzek: Kolloid Z., 88(1939) 68-72. (2) R.S. Stein: J. Polymer Sci., 31(1958) 327-334.
推奨装置・推奨ソフトウェア
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