DD法®によるγ-アルミナの定量分析
はじめに
X線回折法による定量分析では、各成分に由来するピークの積分強度を正確に求めることが必要ですが、結晶性が低くブロードなピークを示す化合物の場合、積分強度の算出そのものが困難です。当社が開発した新しい定量分析法、Direct Derivation (DD)法®では、単一成分の測定プロファイルを元に全パターンフィッティングを行います。この結果、結晶構造からプロファイル関数を計算することが難しいような、複雑なパターンを示す化合物に対しても、簡単に全パターンフィッティングができます。ここではα-Al2O3とγ-Al2O3の混合物を定量しました。
測定・解析例
Al2O3には結晶性の高いα型(高温型)と結晶性の低いγ型(低温型)の結晶多形が存在します。ここではα-Al2O3が1、10、30 mass%になるようにγ- Al2O3と混合し、2θ = 5~120°を10 °/minで測定しました。得られたX線回折プロファイルの重ね描きを図1に、3つの混合物の解析結果のRwp、S値、調製値および定量値を表1に示します。この結果から、結晶性が低い物質に対しても、正確な定量値を算出できることがわかりました。
図1 α-Al2O3とγ-Al2O3の混合物から得られたX線回折プロファイルの重ね描き
表1 Rwp、S値、α-Al2O3の調製値および定量値
1% | 10% | 30% | |
Rwp (%) | 8.58 | 7.70 | 7.69 |
S | 1.3188 | 1.1698 | 1.1527 |
調製値 (mass%) | 1.01 | 10.01 | 30.04 |
定量値 (mass%) | 1.01(3) | 9.96(4) |
29.67(4) |
参考文献:(1) H. Toraya: J. Appl. Cryst., 49 (2016) 1508-1516.
(2) H. Toraya: J. Appl. Cryst., 52 (2019) 520–531.
推奨装置・ソフトウェア
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※「DD法」「Direct Derivation Method」「DD Method」は、株式会社リガクの商標または登録商標です。