DD法®による原薬の微量不純物の定量下限
はじめに
医薬品原薬の品質管理において、微量の不純物として含有される結晶多形や水和物を定量したいというニーズがあります。従来のX線回折法による定量分析では、検量線作成、RIR値と呼ばれる参照強度比、結晶構造(CIF)のいずれかが必要ですが、原薬となる化合物の情報はデータベースに登録されていないことが多く、その定量は容易ではありませんでした。当社が開発した新しい定量分析法、Direct Derivation (DD)法®では、X線回折測定データと化学式だけで定量値を簡便に算出できます(1)-(3)。ここでは原薬の微量水和物相についてDD法®による定量分析を行い、定量下限値を算出しました。
測定・解析例
図1にはテオフィリンの無水物と一水和物のX線回折プロファイルの多重書きを示します。図2にはテオフィリン無水物と0.10 mass%一水和物の混合物のX線回折プロファイルの多重書きを示します。10回の単純繰り返しで2θ = 5~120°を10 °/min(1測定約12分)で測定し、定量下限値を算出しました。表1に得られた定量値と定量下限値を示します。DD法®による解析で、検量線法に匹敵する定量下限値が得られました。
図1 テオフィリンの無水物と一水和物のX線回折プロファイルの多重書き(2θ = 5~60 °を抜粋)
図2 テオフィリン無水物と0.10 mass%一水和物混合物の
X線回折プロファイル多重書き(10回の繰り返し測定結果)
表1 テオフィリン一水和物の定量値および定量下限値(単位:mass%)
調製値 | 0.10 |
定量値平均 | 0.11±0.004 |
定量下限値 | 0.04 |
参考文献: (1) H. Toraya: J. Appl. Cryst., 49 (2016) 1508-1516.
(2) 虎谷秀穂: リガクジャーナル, 48(2) (2017) 12-18.
(3) H. Toraya: J. Appl. Cryst., 50 (2017) 820–829.
推奨装置
- 全自動多目的X線回折装置 SmartLab + ASC-10 + 高分解能・高速1次元X線検出器 D/teX Ultra250
- X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II(Powder XRDプラグイン)
※「DD法」「Direct Derivation Method」「DD Method」は、株式会社リガクの商標または登録商標です。