超小角X線散乱法による 強誘電体ナノ粒子の粒径評価
Application Note
B-XRD1110
はじめに
BaTiO3(BT)は代表的な強誘電体で、コンデンサーの主材料として広く使われています。デバイスの小型化に伴い、誘電特性を高めたナノコンデンサー材料研究と共にナノサイズのBT研究も盛んに行われています。室温で発現するBTの強誘電性は正方晶の結晶構造と強く関係があります。一方、BTの誘電率は粒径が小さくなると増加し、ある臨界サイズ以下になると室温にもかかわらず立方晶を示し、強誘電性を消失することが報告されています。強誘電性と結晶構造、そして粒径の関係を精密に調べるため、様々な測定方法が試みられていますが、その中でも合成された粉末材料の粒径を希釈せずに非破壊で調べられる小角・超小角X線散乱法が注目されています。ここでは、超小角X線散乱法を用いて粉末材料BTの粒径とその分布を評価します。
測定・解析例
市販の100nm以下の粒径のBaTiO3(BT)粉末材料を厚み2.5μmのマイラフィルムに挟んで、測定時間約10分の条件で超小角X線散乱測定を行いました。図1(a)に得られた超小角X線散乱プロファイルと3つの球モデルで計算した結果を、(b)に計算結果から得られた粒径分布を示します。3つの球モデルで計算した結果、約30~50nmの平均粒径を示す1次粒径(散乱体モデル1と2)と、約700nmの凝集した2次粒径(散乱体モデル3)が観測されていることが分かりました(表1)。さらに単分散に近い平均粒径47nmの粒子(散乱体モデル2)が存在していることも分かりました。このように、超小角X線散乱法を用いると、粉末材料でも希釈せず短時間で数十ナノから数百ナノメートルの粒径を同時に測定し、粒径分布だけではなくその分散状態を評価することが可能です。
表1 球モデルで計算した平均粒径・粒径分布
# | 平均粒径 (nm) | 粒径分布RSD (% |
散乱体モデル1 | 36.6 | 55.4 |
散乱体モデル2 | 47.2 | 8.9 |
散乱体モデル3 | 703.2 | 62.1 |
推奨装置・ソフトウェア
- 全自動多目的X線回折装置 SmartLab
- X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II (MRSAXSプラグイン)