Mo線源を用いた リチウムイオン電池材料のリートベルト解析

Application Note B-XRD1080

はじめに

リチウムイオン2次電池の正極材料の一つとして知られるオリビン型リチウム化合物は充放電時の熱安定性、化学的安定性などに優れており、また高価な遷移金属を使用しないため経済性も高く、次世代電池の正極材料として有望視されています。現在では他の金属を固溶、置換させることで電気特性の向上を図り、より高性能な正極材料の開発が行われています。

測定・解析例

オリビン型リチウム化合物Li(Fe₀.₈Mn₀.₂)PO₄はFeサイトにMnを固溶させ、電気特性を向上させています。電気特性は結晶構造に依存するので、Rietveld法による結晶構造解析を行うことで、さまざまな知見を得ることができます。 Li(Fe₀.₈Mn₀.₂)PO₄はFeやMnを含むため、透過法で測定を行う場合、Cu線源では試料に対する吸収が大きく、回折強度が得られませんが、透過力が高いMo線源を用いることで強度が高く低バックグラウンドの質の高いデータを取得できます。図1に、Mo線源を用いて得られたX線回折パターンと結晶構造解析結果を、図2には解析により得られた結晶構造モデル図と、固溶状態が異なる化合物の平均原子間距離を示します。これらの結果から、透過力が高いMo線源を用いることで、固溶によるわずかな原子間距離の変化も見分けられる正確な解析が可能であることがわかります。

オリビン型リチウム化合物 Li(Fe0.8Mn0.2)PO4のリートベルト解析結果

図1 オリビン型リチウム化合物 Li(Fe₀.₈Mn₀.₂)PO₄のリートベルト解析結果


オリビン型リチウム化合物 Li(Fe0.8Mn0.2)PO4の結晶構造モデル図と平均原子間距離

図2 オリビン型リチウム化合物 Li(Fe₀.₈Mn₀.₂)PO₄の結晶構造モデル図と平均原子間距離


推奨装置

  • 全自動多目的X線回折装置 SmartLab + Mo線源
  • 高分解能・高速1次元検出器 D/teX Ultra250 HE
  • ハイブリッド型多次元ピクセル検出器 HyPix-3000 HE
  • 統合X線回折ソフトウェア SmartLab Studio II (Powder XRDプラグイン)

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