X線回折装置による気密試料ホルダーを用いた吸湿性粘土鉱物の測定

Application Note B-XRD1067

はじめに

粘土鉱物は、水分との相互作用により安定した機能を発したり消失したりする性質を持ちます。粘土鉱物のこのような性質は、粒子表面だけではなく、結晶構造内の空孔や層間への水分子の吸・脱着によって結晶構造が変化することに起因することが報告されています。環境条件によって物性が敏感に変化する粘土鉱物の結晶構造を調べるためには、外部環境から試料を完全に分離する必要があります。ここでは、試料を外部環境から隔離することができる汎用雰囲気セパレーターを用いて、吸湿性粘土鉱物を測定した例を紹介します。

測定・解析例

汎用雰囲気セパレーターは、図1のように、(1)グローブボックス内で試料を詰め、(2)カバーを装着し、(3)一般的なX線回折測定用試料ホルダーと同様に試料台に載せるだけで、簡単に気密状態下での測定を行うことができます。

汎用雰囲気セパレーターを用いた試料調製

図1 汎用雰囲気セパレーターを用いた試料調製

図2に一般的なX線回折測定用のガラス試料ホルダーと汎用雰囲気セパレーターを使用した場合のモンモリロナイトのX線回折パターンを示します。モンモリロナイトは層状のケイ酸塩鉱物に分類される粘土鉱物であり、層間距離に対応するX線回折ピークが低角度領域に現れます。ガラス試料ホルダーを用いた場合(図2(a))、周期構造による回折ピークが生じていることから、層間水の蒸発により充填直後の構造が保持されていないことがわかります。一方、汎用雰囲気セパレーターを使用した場合(図2(b))は、時間が経過しても周期構造によるピークが生じないことから、層間の水が蒸発せず、充填直後の周期構造が乱れた構造が保持されていることがわかります。このように、汎用雰囲気セパレーターを使用することで、試料に含まれる水分が蒸発することなく、長時間安定した状態での測定が可能となります。

モンモリロナイトのX線回折パターン多重書き

図2  モンモリロナイトのX線回折パターン多重書き
(a)ガラス試料ホルダーを用いた場合(b)汎用雰囲気セパレーターを用いた場合

推奨装置・ソフトウェア

  • デスクトップX線回折装置 MiniFlex + 高速1次元X線検出器 D/teX Ultra2 + 汎用雰囲気セパレーター

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