X線回折装置による赤外線加熱高温装置を用いたシリサイド粉末の格子定数変化の観察

Application Note B-XRD1062

はじめに 

格子定数は、結晶構造の基本単位である単位格子の辺の長さ(a、b、c)と、それらのなす角度(α、β、γ)を規定する定数です。格子定数を初期構造として、実測した粉末X線回折プロファイルのピーク位置から格子定数の精密化を行うと、温度条件や固溶体組成の異なる金属やセラミックスの格子定数のわずかな変化を調べることができます。赤外線加熱高温装置は、黒色石英製の試料パンに充填した粉末試料を赤外線によって加熱するもので、金属製の試料パンと反応する恐れのある試料の測定にも適しています。

測定・解析例

図1に、各温度で測定したNiSi粉末のX線回折プロファイルを示します。昇温に伴い、ピークが低角度側、もしくは高角度側にシフトしていることがわかります。低角度側へのピークシフトは格子面間隔の広がりを意味します。各ピークのシフトする方向とシフト量が一定でないことから、NiSi の熱膨張係数がa、b、c の間で異なること、また負の熱膨張係数を持つものがあることが予想されます。
図2に、WPPF法によって求めたa、b、c の測定温度に対するプロットを示します(α、β、γ = 90˚ に固定)。解析の結果、a、b、c の熱膨張が異方性を示すこと、b の熱膨張係数が負の値を示すことがわかりました。また、熱膨張率が一定ではなく温度に対してなだらかな曲線を示す一方で、単位格子体積は直線的に増加することがわかりました。

各温度で測定したNiSi粉末のX線回折プロファイル

図1 各温度で測定したNiSi粉末のX線回折プロファイル

各温度に対するNiSiの格子定数a、b、cと単位格子体積のプロット

図2 各温度に対するNiSiの格子定数abcと単位格子体積のプロット

推奨装置・ソフトウェア

  • 全自動多目的X線回折装置 SmartLab + 赤外線加熱高温装置 Reactor X
  • X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II (Powder XRD プラグイン)

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