湿度雰囲気下でのXRD-DSC同時測定による 原薬の転移挙動の観察

    Application Note B-XRD1021

    はじめに 

    医薬品の原薬には、同じ化合物でも結晶構造が異なる結晶多形(Form)が存在します。原薬は熱や水分により元のFormから異なるFormへと転移することがあり、示差走査熱量分析(DSC)やX線回折(XRD)によってFormが同定されます。DSCで観測される吸発熱を伴って何らかの物理・化学的変化が起きていることはわかりますが、各Formの出現温度の把握には複数回のXRD測定やDSC測定が必要です。X線回折と示差走査熱量分析の同時測定(XRD-DSC)では、温度と湿度に対する物質の吸発熱変化と結晶構造変化を同時に観察できます。ここではてんかんの治療薬として知られるカルバマゼピンについてXRD-DSC測定を行いました。

    測定・解析例

    カルバマゼピンは融点の直前に吸熱反応が見られ、高温相に転移することが知られています。カルバマゼピンを高湿度雰囲気下(水蒸気分圧8.6kPa)で加熱した結果を図1に示します。70°C付近で低温相から低温相1に、145°C付近の小さな吸熱反応を経て低温相2に、融点直前で高温相に変化することがわかりました。このように高湿度雰囲気下で加熱すると、新たな結晶相が現れることが明らかになりました。

    カルバマゼピンのXRD-DSC同時測定結果(高湿度雰囲気下)

    図1 カルバマゼピンのXRD-DSC同時測定結果(高湿度雰囲気下)

    参考文献:    Jun Han, Geoff G.Z. Zhang, Devalina Law, Weili Wang, Michelle A. Long: The 31st NATAS meeting, Sep. 22-24, 2003.

    推奨装置

    • 全自動多目的X線回折装置 SmartLab + X-ray DSC + 水蒸気発生装置 HUM
    • 全自動多目的X線回折装置 SmartLab SE + X-ray DSC + 水蒸気発生装置 HUM

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