FP法による光触媒材料の結晶子サイズ分布解析

    Application Note B-XRD1018

    はじめに

    セラミックスや金属の多くは、微小な単結晶である結晶子からなる多結晶体で、結晶子サイズは、電池、磁石、触媒等の性能に影響すると言われています。結晶子サイズはScherrer法による解析でX線回折ピークの幅から求められますが、ファンダメンタルパラメーター(FP)法でピークの形状を解析すると、結晶子サイズの分布も求めることができます。酸化亜鉛は光触媒活性を有する環境調和型材料として注目を集めていますが、3.37eVのバンドギャップを有しているにも関わらず、可視光に応答し、光触媒作用を呈する理由には、特徴的な表面組織や結晶子サイズが深く関わっていると考えられています。ここでは、酸化亜鉛の熱処理と結晶子サイズ分布の関係を調べました。

    測定・解析例

    400°C、500°C、600°C、700°Cおよび800°Cで1時間、酸素中で加熱処理した酸化亜鉛粉末のX線回折プロファイルを測定しました。結晶子サイズ分布を求めるため、他の回折線との重なりがなく、回折強度が高い110回折線を用いて解析を行いました。図1に、解析に使用した各温度の110回折線と、シミュレーションプロファイルの重ね書きを示します。処理温度を高くすることにより回折線幅が狭くなっていることから、結晶子サイズが大きくなっていることがわかりました。これらのピークを用いて解析した結晶子サイズ分布を図2に示します。図2の左図は結晶子数分布であり、右図は結晶子体積分布です。それぞれ結晶子の直径に対する数および体積の比率を表わしています。結晶子数分布および体積分布のいずれも、処理温度の高い試料ほど結晶子サイズが大きくなり、さらに分布が広くなる傾向が明らかになりました(1)(2)。

    B-XRD1018 Figure 1 X-ray diffraction profile of zinc oxide nanocrystal_ja

    図1 酸化亜鉛ナノ結晶のX線回折プロファイル

    (実線:シミュレーション ●:実測値)

     


    結晶子サイズ分布の解析結果 

    図2 結晶子サイズ分布の解析結果 (左:結晶子数分布 右:結晶子体積分布)

    参考文献: (1)小中 他: ナノ学会第5回大会講演予稿集, 2007, 162, PS74.

           (2)小中 他: Jour. Flux Growth, 2 (2007), 41-44.

    試料ご提供:仙台電波工業高等専門学校 羽賀浩一先生および 東北大学 宍戸統悦先生

    推奨装置・ソフトウェア

    • 全自動多目的X線回折装置 SmartLab
    • 全自動多目的X線回折装置 SmartLab SE
    • X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II (Powder XRDプラグイン)

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