最新ラボ装置による極微小結晶の構造解析
はじめに
近年クライオ電子顕微鏡を利用した有機化合物の極微小結晶の電子線回折(MicroED)が脚光を浴びています。MicroEDは主に多重反射の影響があるため、1 µmを超える結晶の測定・解析には適していませんが、1 µm以下の微小結晶が測定できるという利点を持っています。しかしながら一部の論文や科学記事では、比較の対象である単結晶X線構造解析の現状について、論文投稿に必要な質の構造解析を行うためには、数100 µmの結晶を必要とするとの記述が散見されます。この記述の真偽を検証するため、最新のラボ装置XtaLAB Synergyを用いて、市販薬のカプセル中の微細粉末結晶の構造解析を実施しました。
測定・解析例
市販解熱剤のカプセルから取り出した極微小結晶(3 × 2 × 1 μm)(図1)を最新のラボ装置である、XtaLAB SynergyCustom FR-X with HyPix-Arc150ºを用い、「What is this?」モードによる未知構造決定自動測定・解析を行いました。その結果、約30分で自動測定・解析が終了し、アセトアミノフェン分子の構造を得ることができました(図2)。
図1 市販解熱剤カプセル中のsub-three結晶
図2 sub-three結晶のWhat is this?自動構造解析結果
同一結晶にて本測定および構造解析を実施後、IUCrの定めた構造解析の基準を満たしているかを判定するサービス“checkCIF”で構造解析結果を検証したところ、重大な欠陥(ALERT A)や深刻な問題(ALERT B)がない、良好な構造解析結果が得られていることが確認されました(表1)。
表1 sub-three結晶の構造解析結果
System |
Detector |
Total time |
I/σ(I) |
Rint (total/last) |
R1/wR |
GooF |
XtaLAB-SynergyCustom |
HyPix-Arc150º |
14 h |
11.18 |
7.2%/33.2% |
5.80%/14.30% |
1.045 |
推奨装置・ソフトウェア
- 単結晶X線構造解析装置 XtaLAB SynergyCustom + 超高輝度X線発生装置 FR-X
+ 湾曲光子計数型ハイブリッドピクセル検出器 HyPix-Arc150º - 単結晶構造解析統合プラットフォーム CrysAlisPro