軽元素のみからなる結晶の Mo 線源を用いた絶対構造の判定

Application Note B-SCX1007

はじめに

天然物等のキラル化合物の絶対立体配置を決定する際に、単結晶X線構造解析は最も信頼性の高い手法として広く使われています。その際には、X線回折の異常分散を利用したBijvoet(1)(2)が用いられます。しかし通常、Neより原子番号が小さい軽元素のみからなる結晶は、Mo線源では異常分散効果が不十分であり、絶対構造を判定することは困難です。CrysAlisProにより最適化された測定スケジュールと、最新のSHELXLにより計算されるFlackパラメーターを採用することにより、軽元素のみからなる結晶においても絶対構造の判定が可能となりました。

測定・解析例

例としてC, H, Oのみからなるスクロースの結晶を用い、Mo線源での絶対構造判定を行いました。デスクトップ単結晶X線構造解析装置 XtaLAB mini IIを用い、CrysAlisProの最適化された絶対構造判定用の測定スケジュールを用いて、回折データを収集しました(図1)。従来版であるSHELXL-97および最新版であるSHELXL-2013(3)の2種類のソフトウェアを用いて構造解析を行った結果、SHELXL-97では絶対構造を判定できなかったのに対し、SHELXL-2013では絶対構造の妥当性を示すFlackパラメーターが0に近く標準不確かさも小さいことから、絶対構造が判定できていることがわかります(図2、表1)。

スクロースのX線回折像

図1 スクロースのX線回折像

スクロースの構造

図2 スクロースの構造

表1 スクロースの構造解析結果

  SHELXL-2013 SHELXL-97
全測定時間 9時間36分
X線源 MoKα
空間群 P 21
Rint値, R1値 1.28%, 2.51%
Flackパラメーター 0.09(8) 0.2(4)

参考文献:  (1) J. M. Bijvoet, A. F. Peerdeman, A. J. van Bommel: Nature, 168 (1951) 271-272.

                        (2) H. D. Flack, G. Bernardinelli: Acta Cryst., A55 (1999) 908-915.

                        (3) G. M. Sheldrick: Acta Cryst., A64 (2008) 112-122.

推奨装置

  • 単結晶X線構造解析装置 XtaLAB Synergyシリーズ
  • デスクトップ単結晶X線構造解析装置 XtaLAB mini II

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