巨大中空錯体の解析例
はじめに
小型のタンパク質にも匹敵する大きさの巨大中空錯体は、良質な結晶さえ得られれば、原理上は小分子と同等の分解能で構造解析を行うことができます。しかしながら本錯体は、柔軟な側鎖や乱れた溶媒分子の影響により、高角側の反射が弱いため、観測しにくく長時間の露光が必要である一方、低角側の反射は比較的強いため、CCDやIP検出器を備えた従来型装置では測定が困難でした。現在、単結晶構造解析用装置の主力となっている、光子計数型ハイブリッド(HPC: Hybrid Photon Counting)検出器は、高感度、低ノイズ、広いダイナミックレンジを併せ持つ検出器です。当社独自開発による光子計数型ハイブリッドピクセル検出器、HyPix-6000HEを用い、本錯体の測定を試みました。
測定・解析例
高角側での露光時間を低角側の5倍程度に設定し測定したところ、全測定範囲において良好なデータを取得することができました。図1に巨大中空錯体の構造解析結果を示します(1)。データ測定ソフトウェアCrysAlisProでは、データ測定と自動解析が同時に進行します。本錯体も、わずか1時間で自動測定・自動構造解析が終了しました。図2にホスト-ゲスト複合体の構造解析例を示します(2)。ホスト内部のゲストのコンフォメーション、ホスト-ゲスト間の相互作用を直接原子レベルで解明することができました。
図1 巨大中空錯体の構造解析例
図2 ホスト-ゲスト複合体の構造解析例
参考文献: (1) K. Yazaki, M. Akita, S. Prusty, D. K. Chand, T. Kikuchi, H. Sato, M. Yoshizawa: Nature Commun., 8 (2017) 15914.
(2) S. Kusaba, M. Yamashina, M. Akita, T. Kikuchi, M. Yoshizawa: Angew. Chem. Int. Ed., 57 (2018) 3706-3710.
推奨装置
- 単結晶X線構造解析装置 XtaLAB Synergyシリーズ