ソフトウェア
SmartLab Studio $\mathrm{I\hspace{-.01em}I}$
SmartLabStudio $\mathrm{I\hspace{-.01em}I}$は測定から解析までX線分析の統合ソフトウェアです。
複数の機能の中から測定用のMeasurementプラグイン、解析用のPDFプラグインを紹介します。
Measurementプラグライン
全散乱測定においては、ミラー調整・光学系調整・キャピラリーの中心位置調整・専用の検出器エネルギーモードを備えたプロファイルの測定を実現しており、誰でも簡単に調整から測定まで実行できます。
光学系調整時における素子交換の指示画面
PDFプラグイン
複雑なPDF解析の手順をフロー化し、ステップバイステップで解析を行うことが出来ます。
$S(Q)$算出、PDF算出、RMCについて紹介します。
$S(Q)$算出
$S(Q)$算出時には、コンプトン散乱成分と原子散乱成分の足し合わせた強度が表示され、試料からの干渉性散乱強度が正しく抽出できているか確認することができます。
PDFプラグインの $S(Q)$算出時の画面
図 14に強度補正されたプロファイル(赤)と原子散乱因子(黒)に一致しているかどうかの例を示します。 一致していると、強度補正されたプロファイルの中心を原子散乱因子の曲線が通っており、算出されている$S(Q)$プロファイル(緑)が第2縦軸の1の周りで周期振動します(図 14左)。 しかしそれらが一致していない場合、$S(Q)$プロファイルは右肩下がりになっており、これは試料の原子数比や吸収の計算が間違っていることが推察されます(図 14右)。
PDFプラグインでは、このように解析の良し悪しを簡単に判別することもできます。 因みに図14右のような$S(Q)$の歪みを多項式近似によりベースライン補正する機能も報告されていますが、短距離側の真の情報を欠損させてしまう可能性があるので注意が必要です。
$S(Q)$算出の良し悪し 左: よい解析例、右: 悪い解析例
PDF算出
PDF算出画面を示します。結晶構造情報等があれば、自動的に結合距離を計算しプロファイルに青線で重ね書きされます。 またピーク位置もサーチされており、ピーク位置情報を簡単に知ることが出来ます。勿論、$g(r)$、$G(r)$、$R(r)$、$T(r)$の全ての関数に対応しており、相互にワンクリックで変換することが可能です。
$G(r)$算出の画面
前述した多項式近似による $S(Q)$の補正とは異なり、SLS$\mathrm{I\hspace{-.01em}I}$にはリップル除去機能が搭載されています。 図にそれらの影響を $G(r)$で示します。窓関数は、フーリエ変換の打切り誤差による振動を抑制する効果があります。 リップル除去補正は、PDFプラグインの特長的な補正で設定した結合距離以下の非物理的な振動成分を $S(Q)$から除去することにより、余分な振動を$G(r)$に含めることなく算出することが出来ます。 そのことにより、$G(r)$による構造推定のフィッティング精度の向上が期待できます。
窓関数とリップル補正適用時の $G(r)$
RMC計算
RMC法のプログラムはRMCProfileが有名ですが、PDFプラグインでもRMC機能を実装しました。 現在、PDFプラグインに実装されているRMCは結晶構造中の局所構造を推定に対応しています。 従来のRMCではパラメーターの設定が難しく、RMCの使い方を習熟するには多大な時間を要していました。 しかし、PDFプラグインに実装されたRMCでは自動的にパラメーターを設定する為、必要最低限のパラメーターの入力だけでRMCを実行することができます。
RMC実行中の画面