アプリケーションノート B-XRD2038
はじめに
半導体デバイスにおいて、Cu配線とSi基板との間の拡散を抑制するためのバリア材料として金属薄膜が広く用いられています。その性能は膜厚や構造に強く依存し、バリア膜の膜厚が局所的に低下すると、Cuの拡散や電気特性のばらつきを引き起こす可能性があります。特に大面積基板においては、膜厚の面内均一性が歩留まりに大きく影響するため、膜構造の面内分布評価が重要となります。Rθアタッチメント(図1)を用いれば、平行移動(R軸)と回転(θ軸)との組み合わせにより、従来のXYアタッチメントでは実現できない8インチウェハのフルマップ測定が可能になります。本測定例では、X線反射率法(XRR)を用いて、8インチSi基板上の金属膜の膜厚・密度・粗さをフルマップで評価しました。
図1: Rθアタッチメント
測定・解析例
8インチSi基板上のTa薄膜(設計膜厚 20 nm)を例として評価しました。図2に基板の中心部における測定・解析結果を示します。膜構造モデルとして、Ta薄膜の表面に自然酸化膜Ta₂O₅(1)、基板とTa薄膜の界面に低密度の遷移層(2)を仮定し、プロファイルフィッティングにより各層の膜厚・密度・粗さを算出しました。
図2: XRR解析結果
実測プロファイルと計算プロファイルはおおむね一致しており、試料表面に膜厚3.32 nmのTa酸化層、およびTa膜とSi基板の界面に膜厚5.22 nmの遷移層が存在することが示唆されました。Ta酸化層の密度がバルクのTa₂O₅(8.3 g·cm−3)より低いことから、この層には非晶質や欠陥、空隙が含まれると考えられます。また遷移層の密度がSi(2.32 g·cm−3)やSiO₂(2.20 g·cm−3)より高いことから、この層は成膜工程においてSi基板、Si自然酸化膜とTaとの相互作用によって形成されたTa-Si-O系の界面混合層を反映していると推測されます。 ウェハ面内の膜構造分布を評価するため、XRRのフルマップ測定を実施しました。解析結果のカラーマップ表示を図3に示します。ウェハ全面において、Ta酸化層の膜厚は3.2 nm程度、遷移層の膜厚は5 nm程度であり、特定の面内分布は観測されませんでした。このことから、Ta酸化層および界面遷移層はウェハ全面でほぼ一定の膜構造を有しており、自然酸化および成膜初期の界面反応によって形成される安定な層であることが示唆されました。一方、Ta膜厚に関しては、ウェハの中央よりやや右下の領域を中心とした同心円状の分布が見られました。膜厚は分布の中心で約22.5 nm、外周で19.5 nmと算出されました。またTa膜の密度にも面内分布が確認されました。ウェハの右上の領域では比較的高い密度(約16.5 g·cm−3)であるのに対して、左下端の領域では15 g·cm−3より低い密度が算出されました。
図3: 各層の面内分布評価の結果
以上のように、Rθアタッチメントを用いることで、8インチウェハ上に形成された金属薄膜について、主要層に加えて表面酸化層や界面遷移層も考慮した膜構造のフルマップ評価およびその可視化が可能です。
参考文献:
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M. Khanuja, H. Sharma, B.R. Mehta, S.M. Shivaprasad: XPS depth-profile of the suboxide distribution at the native oxide/Ta interface, Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomena, 169 (2009) 41−45.
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M. Zier, S. Oswald, R. Reiche, M. Kozlowska, K. Wetzig: Interface formation and reactions at Ta–Si and Ta–SiO₂ interfaces studied by XPS and ARXPS, Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomena, 137−140 (2004) 229−233.
推奨装置・ソフトウェア
- 全自動多目的X線回折装置 SmartLab + Rθアタッチメント
- X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II (XRR、Data Visualizationプラグイン)