X線回折法による鉄鉱石の結晶相同定・定量分析

アプリケーションノート B-XRD1165

はじめに

鉄鋼は、自動車、船舶、建築物など多様な産業を支える基盤材料です。その原料である鉄鉱石は、複数の鉄鉱物と、鉄を含まない脈石鉱物から構成されています。近年は鉄含有量が多い高品位鉄鉱石の枯渇により低品位化が進行しており、選鉱による品位向上が重要となっています。選鉱プロセスの選択は鉱物組成に強く依存しますが、化学分析では元素量しかわからず、鉄鉱物や脈石の種類を区別できません。そのため、鉱物組成を適切に評価できず、選鉱プロセスの最適化が困難となります。X線回折法は、鉱物相を直接同定・定量できるため、鉄鉱石の鉱物組成評価に有効です。そこで本稿では、X線回折法を用いた鉄鉱石の結晶相同定と定量分析の事例を紹介します。

測定・解析例

デスクトップX線回折装置MiniFlexを用いて、産地の異なる鉄鉱石の標準物質 NBS 692(Labrador)および NBS 693(Nimba)を測定しました。鉄鉱石は鉄を多く含むため、Cu 管球で測定すると鉄由来の蛍光X線が強く発生し、バックグラウンド強度が高くなることで強度が低い回折ピークを確認しにくくなります。一方Co 管球を使用することで、Cu 管球と比較して鉄由来の蛍光X線によるバックグラウンド強度への影響を低減できます。そこで本事例では Co 管球を使用し、約10分の測定で良好なX線回折パターンを取得しました。

図1に結晶相同定の結果を示します。鉄鉱物として赤鉄鉱(ヘマタイト)、磁鉄鉱(マグネタイト)、針鉄鉱(ゲーサイト)が、脈石鉱物として石英、ギブサイト、ディッカイトが同定されました。また、表1にリートベルト解析による定量分析結果を示します。産地の異なる鉄鉱石では、鉱物組成およびその含有比率が異なることがわかりました。

B-XRD1165_Figure1_NBS692とNBS693の結晶相同定の結果

図 1 NBS692とNBS693の結晶相同定の結果
※縦軸はオフセット表記です。

 

表1:NBS692とNBS693中の各結晶相の重量分率

結晶相 重量分率(mass%)
NBS692(Labrador) NBS693(Nimba)
ヘマタイト (Fe2O3) 70.03 81.02
マグネタイト (Fe3O4) 0.05 2.86
ゲーサイト (FeO(OH)) 16.45 11.08
石英 (SiO2) 11.40 3.98
ギブサイト (Al(OH)3) 0.45 0.99
ディッカイト (Al2Si2O5(OH)4) 1.62 0.07

 

推奨装置・ソフトウェア

  • デスクトップX線回折装置MiniFlex
  • 小型X線回折装置MiniFlex XpC
  • 全自動多目的X線回折装置 SmartLab SE, SmartLab
  • X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II (Powder XRDプラグイン)

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