リートベルト法によるセメント試料の正確で高精度な定量分析

アプリケーションノート B-XRD1140

はじめに

セメントの硬化時間や強度などの性質は、クリンカーを構成する成分に依存することが知られています。クリンカー構成成分(結晶相)の定量分析には光学顕微鏡やX線回折法が用いられており、Rietveld法を組み合わせたX線回折法による定量分析は、迅速かつ簡便な手法としてセメントの研究や品質管理で普及しています。セメントの性質を正確に把握するためには、精度および正確度の高い分析が必要となります。さらにセメント分析では、フリーライムなどの構成成分が環境により変質する可能性があるため、迅速な測定が必要です。ここでは、NISTクリンカー標準試料(NIST2688)を用いて、高速1次元X線検出器 D/teX Ultra2を搭載したデスクトップX線回折装置 MiniFlexにより1測定約5分の10回繰り返し測定を行い、Rietveld解析の定量精度と正確度を評価しました。

測定・解析例

Rietveld解析は、X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio IIのテンプレート機能を用いて行いました。テンプレート機能は、解析を行う結晶相やその初期値、精密化の手順をあらかじめ保存しておくことで、複数のデータに対して同じ条件で解析を行うことができる機能です。図1にNIST2688の10回の測定データにおける定量結果および認証値と定量精度を示します。各結晶相のプロットが10回の定量値を、黒線が認証値とその不確かさを示しています。また、表1に各成分の定量値の平均(ばらつき: 1σ (n = 10))と認証値を示します。図1および表1より、全ての結晶相の定量値は認証値の不確かさの範囲内であり、正確度が高い定量結果が得られていたことがわかります。また定量値のばらつきが極めて小さく、高精度な定量結果が得られました。このように、高速1次元X線検出器を用いて短時間で高強度な測定データを取得し、さらにテンプレート機能を用いたRietveld解析を行うことで、正確で高精度なセメント試料の定量分析が可能です。

NIST2688中各結晶相のRietveld解析による定量結果と精度

図1 NIST2688中各結晶相のRietveld解析による定量結果と精度


表1 NIST2688の定量値と認証値

(単位: mass%, ばらつき: 1σ (n = 10))

結晶相 定量値 認証値
エーライト 65.23 ± 0.20 64.95 ± 1.04
ビーライト 17.99 ± 0.18 17.45 ± 0.96
アルミネート 4.87 ± 0.07 4.99 ± 0.50
フェライト 11.9 1± 0.08 12.20 ± 0.84

推奨装置・ソフトウェア

  • デスクトップX線回折装置 MiniFlex + 高速1次元X線検出器 D/teX Ultra2
  • 全自動多目的X線回折装置 SmartLab SE + 高分解能・高速1次元X線検出器 D/teX Ultra250
  • 全自動多目的X線回折装置 SmartLab + 高分解能・高速1次元X線検出器 D/teX Ultra250
  • X線分析統合ソフトウェア SmartLab Studio II (Powder XRDプラグイン)

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