試料観察機能を用いたChromTA™ (色彩熱分析)による非晶質PMMAの解析

アプリケーションノート B-TA1085

はじめに

ポリメチルメタクリレート(PMMA)は、光学材料や工業材料として広く使用されている代表的な非晶質ポリマーです。非晶質ポリマーは結晶性材料のような明確な融解挙動を示さないため、従来のDSCなどの熱分析手法では、加熱に伴う試料の粘度や粘性変化を直接的に観測、評価することが困難です。

本アプリケーションでは、試料観察機能付きSTAとChromTA™(色彩熱分析)を組み合わせ、非晶質PMMA粉末の加熱過程における熱挙動を、熱分析曲線および画像イメージに加えて、試料外観色の変化に基づいて評価しました。

測定・解析例

測定には、試料観察ユニット搭載したSTAを用い、試料には非晶質PMMA粉末10.21mgを窒素ガス雰囲気(300mL/min)下、昇温速度3°C/minに設定して、室温から280°Cまで加熱しました。測定中はTG-DSCを取得すると同時に、試料表面を連続的にモニター撮影し、得られた画像データをChromTAにより解析しました。画像イメージから4種類の色空間データ(RGB、CMYK、HSVおよびLab)を算出し、温度および時間と同期させることで、熱イベントと外観(構造)変化の相関を評価しました。

B-TA1085 図 1 TG-DSC結果とChromTAによる色調変化(CMYK)の同期グラフ

図1に非晶質PMMA粉末のTG-DSC結果とChromTAによる色調変化の同期グラフを示します。

DSC曲線上では、110°C~120°Cに吸熱方向へのベースラインシフトが観測され、この温度域でガラス転移が確認されました。

一方、ChromTA解析では、CMYK色パラメータの変化が148°C付近より確認され、この温度域から試料の粒形に変化が現れ始めました。186°C付近からは大きな色調変化(K値:KEY PLATE(キー・ブラック))が確認され、これに伴い試料の粘性が大きく変化していく様子が視覚的かつ定量的に捉えられました。さらに温度上昇に伴い粒形は徐々に球状へと変化し、その後、粒子同士が凝集して粒径が大きくなっていく挙動が確認されました。265°C付近の変曲点より粘性変化と同時に試料の発泡が観測され、300°C以降で分解による質量減少が始まると、各色パラメータには試料の発泡を示す大きく激しいノイズ状の変化が現れました。

試料観察STAとChromTAを組み合わせることで、非晶質PMMAにおけるガラス転移以降の粒子形状の変化、粘性変化、凝集挙動、さらには発泡から分解開始に至る一連の過程を、温度と同期させて連続的に把握できることが示されました。

ポリマーの製造成形プロセスにおいては、単なる温度管理ではなく、温度上昇に伴う粘性状態の変化を正確に把握することが重要です。特に非晶質ポリマーではその相関を可視化することが成形条件設計や不良低減の鍵となります。ChromTAは、従来の熱分析では捉えることが困難な粘性状態の変化を視覚的・定量的に評価可能であり、粘性制御プロセスに対する貴重な情報を提供する有効な手法となります。

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