アプリケーションノート B-TA1081
はじめに
熱重量測定(TG)および示差熱分析(DTA)は、樹脂材料の分解、酸化、反応挙動を評価するために広く用いられています。一方で、熱分析曲線からだけでは試料内部で発生している物理的変化(膨張、亀裂発生、形態変化など)を直接把握することは困難です。
本アプリケーションでは、エポキシ樹脂ペレットを例に、試料観察機能が従来のTG-DTA解析に対してどのような付加価値を与えるかを評価しました。
測定・解析例
測定には、試料観察ユニット搭載したSTAを用い、試料にはエポキシ樹脂ペレット53.09 mgを使用し、窒素ガス雰囲気(300mL/min)下で、昇温速度10℃/minに設定し、室温から1000℃まで加熱しました。
図 1 TG-DTA測定結果
図1にエポキシ樹脂のTG(DTG)-DTA測定結果を示します。この結果から、エポキシ樹脂は加熱に伴い緩やかな質量減少を示し、約350℃~500℃付近に顕著なDTAピークが観測されました。これらのピークは、エポキシ樹脂の分解反応に伴う反応熱に対応しますが、これらの曲線挙動のみからは、この温度域で試料内部で生じている具体的な物理変化を直接判断することは困難です。
図 2 TG-DTA測定結果と同期した試料観察画像
図2は、TG-DTAとともに同期して取得した試料観察画像を示しています。これらの画像をTG-DTA曲線と対応付けて解析した結果、370℃付近の温度から、以下の現象が明確に確認されました。
- 試料内部からの急激なガス発生し、内部圧力の上昇に起因する試料表面に亀裂が発生
- 亀裂は温度上昇とともに成長し、最大で約0.65 mmの亀裂幅が観測
これらの物理的変化は、TGやDTAの曲線上には明確な特徴として現れておらず、試料観察を行うことで初めて把握可能な情報です。特に、分解反応に伴うガス発生とそれに起因する試料破壊は、材料評価や実使用環境を考慮する上で極めて重要な情報となります。
このことから、試料観察機能を備えたSTAは従来の熱分析に視覚的情報を不可できる高付加価値な材料評価手法として有効であるといえます。