非定常熱線(トランジエント・ホットワイヤー)法 による流体の熱伝導率測定
アプリケーションノート
B-TA4018
はじめに
非定常熱線法(Transient Hot Wire Method)は、流体分野では細線加熱法と称され、非定常状態で熱伝導率を測 定する手法である。一般に、非定常状態では熱拡散率が測定され、例えば、レーザーフラッシュ法に代表されるよう に、熱伝導率を求めるには別途、測定した試料の比熱容量と密度を基に計算する必要がある。トランジエント・ホット ワイヤー(THW)法は既知の熱量を流体内に放散させることにより、非定常法でありながら熱伝導率が直接得られる ことを利点としている。しかし、THW法による流体の熱伝導率測定は、対流発生の影響を実験技術的に取り除くこと が困難となり、自然対流の発生時間は、試料の粘度などの物性値、細線の寸法、発熱量、支持状態などに依存する。 TRIDENT/THWセンサーは、測定時間を約1秒間で完結させることで、流体の対流の影響を最小限に抑えた流体専 用の熱伝導率測定法である。
測定・解析例
- 測定試料:蒸留水(20.7℃、27.2℃、38.7℃)
- 使用装置:熱伝導率測定装置 TRIDENT/THWセンサー(流体専用)
- サンプルの準備: THW容器に測定サンプルを充填(45mL、ねじ山の底まで)し、オーバーフローパイプをTHWセン サーハウジングの圧力リリーフバルブに接続する。THWセンサーを容器内にゆっくりと配置し、そ の後、容器をゆっくりと回転させてセンサーを容器に密閉、固定する。

(左)THWセンサー | (右)サンプルのセッティング

熱伝導率 / W/mK | |||
サンプル | 蒸留水 | ||
温度℃ | 20.7 | 27.2 | 38.7 |
1 | 0.6074 | 0.626 | 0.6548 |
2 | 0.6008 | 0.6153 | 0.6629 |
3 | 0.6033 | 0.6177 | 0.6572 |
4 | 0.6017 | 0.6238 | 0.6725 |
5 | 0.6061 | 0.6123 | 0.6652 |
6 | 0.6033 | 0.6232 | 0.6642 |
7 | 0.6094 | 0.6214 | 0.6552 |
8 | 0.6088 | 0.618 | 0.6593 |
9 | 0.6092 | 0.628 | 0.6505 |
10 | 0.6097 | 0.6232 | 0.6526 |
平均 | 0.606 | 0.6209 | 0.6594 |
STD % | 0.54 | 0.75 | 0.97 |
水の熱伝導率は温度に依存して変化し、一般的に、温度が 上昇すると熱伝導率も増加する。 TRIDENT/THWセンサーを用いることで、短時間にて、流体 の熱伝導率を簡便に評価でき、室温近傍でも顕著な温度依 存性を示すことがわかる。
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