NEX CG II による 汚染土壌中の有害元素の分析
はじめに
環境問題上、汚染された土壌は厳しく管理する必要があります。土壌汚染対策法では次のように記載されています。
①新たな土壌汚染の発生を未然に防止すること
②土壌汚染の状況を的確に把握すること
③土壌汚染による人の健康被害を防止すること
蛍光X線分析は、簡単な試料処理で元素分析が可能で、第二種特定有害物質のカドミウム(Cd)、鉛(Pb)、セレン(Se)、ひ素(As)、水銀(Hg)、クロム(Cr)を迅速に分析することができます。
ここで紹介する偏光光学系エネルギー分散型蛍光X線分析装置NEX CG II(ネックスシージーツー)は2次ターゲットを用いた偏光光学系を採用しており、高PB 比で高感度分析ができ、土壌含有量基準を十分に満足する性能を有します。土壌は主成分の酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化鉄(Fe2O3)をはじめとする遷移元素といった様々な共存元素があり、重なりの多い複雑な蛍光X線スペクトルとなる場合があります。この様な複雑なスペクトルの定量分析において、エネルギー分散型装置専用のスタンダートレスFPのRPF-SQX (Rigaku Profile Fitting -Spectra Quant X)を用いて、正確さが高い定量値を得ることができます。
試料処理
測定試料は日本分析化学会 汚染土壌認証標準物質(褐色森林土)6 水準の標準試料を用いました。汚染土壌の分析は迅速さが求められるため、“粉末のまま”で行っています。試料はChemplex 社製試料セル1330 に粉末のままで4g 入れました。分析窓はChemplex 社製4µm 厚プロレンフィルムを使用しました。
装置及び測定条件
NEX CG IIでの測定条件を表1 に示します。分析対象元素の測定スペクトルに合わせて2 次ターゲットを自動選択し、測定を行うシステムを採用しています。各測定元素範囲において最適な励起X線を用いて広い元素範囲で高感度に分析できることが、2次ターゲット方式の大きな特長です。
表1 NEX CG IIの測定条件
汚染土壌の定性スペクトル
チャート1 に汚染土壌認証標準物質JSAC0461、 JSAC0462、JSAC0463、JSAC0464の重ね書き定性スペクトルを示します。土壌含有量基準はCd、Se、As、Pbが150 mg/kg(ppm)、Hgは15 mg/kg(ppm)、Cr(六価クロム)が250 mg/kg(ppm)となっています。蛍光X線におけるCrは全クロムでの分析値です。
偏光光学系によりPB比の高いスペクトルが得られており、上記基準より低い含有率をもつ標準試料においても、それぞれの有害元素のスペクトルが明確に観測されています。
チャート1 汚染土壌の定性スペクトル
(a)2次ターゲット(Al) : カドミウム(Cd)
(b)2次ターゲット(Mo) :鉛(Pb)、砒素(As)、セレン(Se)、水銀(Hg)
(c)2次ターゲット(Cu) :クロム(Cr)
スタンダードレスFP分析
スタンダードレスFPのRPF-SQX プログラムを用いた定量分析結果を表2 に示します。各元素に対し良い一致を示しています。また、同一サンプル(JSAC0463)に対する単純10回繰り返し時の標準偏差と各元素の検出下限(LLD)を表3に示します。
表2 汚染土壌のスタンダードレスFP分析結果
まとめ
汚染土壌中の有害重元素分析を行いました。2次ターゲットと偏光光学系により,ppm レベルの有害重元素のスペクトルがPB比よく測定でき、RPF-SQX 分析により、正確さが高い定量分析ができることを示しました。