NEX CG II を用いた ガソリン中微量鉛(Pb)分析
はじめに
四エチル鉛(TEL)は、ガソリンに添加されるアンチノック剤です。鉛(Pb)は有害金属であり、排気ガス中の鉛により鉛中毒の原因となります。1970年代より、欧米を皮切りに世界各地で鉛を含有する自動車用ガソリンの使用を廃止する動きが始まりました。また、一部のプロペラ機用ガソリンでは鉛が使用されていますが、この燃料についても鉛の低減・除去に向けた取り組みが行われています。ガソリン中の鉛の測定は、XRF(蛍光X線)を用いたASTM D5059が主な国際標準試験法の一つとなっています。ASTM D5059 は、以下の濃度範囲におけるガソリンの総鉛含有量の測定を対象としています。
表1 ASTM D5059の鉛の濃度範囲
偏光光学系エネルギー分散型蛍光X線分析装置 NEX CG II(ネックス・シージーツー)は、単純な操作で簡単にガソリン中の微量鉛の分析が可能です。特別な試料処理や調製、及び技術的な知識の必要なく迅速に結果を得ることができ、ASTM D5059による鉛の測定をはじめ、石油・燃料産業における多くのアプリケーションに対応しています。今回は、ARTM D5059 Part CおよびPart Aに準拠した、ビスマス(Bi)内標準法によるガソリン中Pbの分析について紹介します。
図1 NEX CG II
分析結果
(1)ガソリン中鉛(Pb)の定量分析
市販の添加物を含むガソリン標準試料を用いて検量線を作成しました。Part C検証用については、試料の「標準値」と作成した
検量線による「測定値」を表2、相関図を図2に、Part A検証用については表3、図3に示します。このとき検量線は、ビスマス内標準線で除したX線強度比を使用しています。
表2 Part C検証用試料のPbの分析結果(単位:g Pb/L)
表3 Part A検証用試料のPbの分析結果(単位:g Pb/L)
図3 標準値と測定値の相関図(Part A)
(2)ガソリン中Pb分析の再現性確認結果
繰り返し再現性を確認するために、標準試料5点について単純繰り返し測定を行いました。得られた再現性確認結果を表4に示します。このとき、1回あたりの分析時間は300秒とし、蒸発誤差を最小にするため、各試料の繰り返し回数を5回としています。
表4 ガソリン中Pbの再現性確認結果(単位:g Pb/L)
(3)ガソリン中Pb分析の検出下限(LLD)
作成した検量線により、ガソリン中Pbの検出下限(LLD)を求めました。検出下限は、Pbを含まないブランクのガソリン試料に対して単純10回繰り返し測定を行い、得られた標準偏差の3倍(3σ)で計算しています。表5より、NEX CG IIでの検出下限は、規格で要求されるLLDを十分満たしていることがわかります。
表5 検出下限(LLD)(単位:g Pb/L)
まとめ
NEX CG IIを用いて、ARTM D5059 Part CおよびAに準拠した、ビスマス内標準法によるガソリン中鉛の分析が簡便・迅速に行えることを確認しました。NEX CG IIは高精度な分析ができ、現場でのスクリーニング分析に加え、製品の品質保証、品質管理分析にも対応できる非常に有用な装置です。