NEX CG II による 原油中の有機塩素化合物の定量分析

Application Note XRF3067

NEX CG IIによる原油中の有機塩素化合物の定量分析

はじめに

原油に含まれる塩化物は、製油所での蒸留過程やパイプラインの配管腐食の原因となります。本来、原油に有機塩素化合物は含まれていませんが、様々な工程の過程で無機塩化物や残留有機塩化物が混入してくることがあり、それが腐食の原因となります。無機塩化物は洗浄プロセスにより原油から除去することができますが、低レベルの有機塩化物は残存する可能性があります。このような塩素の特性を背景に、パイプライン使用契約には、原油に含有する有機塩素量を制限する条項が含まれている場合があります。また、製油所では、脱塩・脱硫後の原油に有機塩素化合物が残留している可能性があるため、石油精製工程でプラントがダメージを受けないように微量塩素を分析する必要があります。
塩素(Cl)分析は原油、輸送、精製過程といった石油化学のあらゆる工程で大きなニーズがあります。NEX CG II (ネックスシージーツー)は2次ターゲットに分光素子を用いて単色化励起をおこなっており、原油中の有機塩素分析ASTM D4929-22 Procedure Cの規格に準拠しています。

NEX CG II cartesian EDXRF spectrometer

図1 NEX CG II

 

検量線

市販の鉱油標準試料を用いて検量線作成を行いました。適正な補正を行うために、標準試料には硫黄と塩素の両方が含まれており、硫黄の含有率は 100~1000 ppmの範囲でClの含有率と無相関な試料としています。検量線はマトリックス補正を行っています。
検量線作成に8水準の標準試料を用いました。検量線を図2に示します。

塩素(Cl)の検量線

図2 塩素(Cl)の検量線

測定精度

NEX CG IIの精度を確認するために、検量線に使用した標準試料で単純10回繰り返し測定を行いました。また、ASTM D4929-22 Procedure Cに基づく繰り返し測定結果と単色化励起EDX装置(monochromatic energy dispersive X-ray fluorescence (MEDXRF))で定められた精度の閾値を表1に示します。良好な繰り返し精度が得られており、また規格を十分に満足していることがわかります。

表1 繰り返し測定による精度確認結果

繰り返し測定による精度確認結果

1) ASTM D4929-22に基づく測定結果
2) MEDXRFでは、r = 0.591×X0.44 、XはCl値ppm

まとめ

NEX CG IIは偏光光学系と2次ターゲットによる単色励起により、ASTM D4929-22 Procedure Cに準拠した測定が可能です。原油中の微量有機塩素の測定に優れた性能を発揮します。
また、塩素(Cl)だけでなく、ナトリウム(Na)~ウラン(U)にわたって、高感度でPB比の良いスペクトルが得られるので、今回ご紹介した原油(ナフサ)だけでなく、反応に使われる触媒試料、石油化学誘導品などに含まれる元素の定量分析を行うことができ、様々な分析用途に利用することができます。

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