Supermini200/残分推定機能を持つ SQX散乱線FP法によるスクリーニング分析

Application Note XRF1036

Supermini200/残分推定機能を持つ SQX散乱線FP法によるスクリーニング分析

はじめに

ファンダメンタルパラメータ(FP)法で計算される理論X線強度を用いた半定量分析は、標準試料が不要という点で成分未知の試料に対するスクリーニング分析に適した手法です。FP法による理論強度計算は原理的に試料に含まれるすべての元素情報を必要とします。このため蛍光X線で分析の困難な水素などの軽元素(非測定成分)を多く含む試料の分析の際にはこれらの元素と含有量を別途もとめて固定値として取り扱うか、残分(バランス成分)として計算する必要がありました。
 2005年、リガクは試料からの散乱線強度を用いてこれら非測定成分の平均原子番号を推定する方法を考案し、推定された情報を試料中の測定残分として演算に用いる新しいSQX分析プログラムを開発しました(SQX散乱線FP法)。
 今回新たに開発された波長分散小型蛍光X線分析装置Supermini200において、酸化物粉末を対象としたSQX散乱線FP法が利用できるようになったので分析例を紹介します。

装置

測定に用いたSupermini200は走査型の波長分散型蛍光X線分析装置(WDXRF)です。冷却水不要、100V電源、省スペースで設置が容易な小型卓上型装置として開発されました。本装置は空冷200WX線管を搭載し、最大3つの分光結晶を用いて酸素からウランまでの元素について高分解能かつ高感度で分析することが可能です。

 搭載されているソフトウェアは簡単な操作で様々な試料分析を

行うことができ、半定量分析プログラムであるSQX分析は面倒な標準試料の準備をすることなく未知試料の組成分析を迅速に行うことが可能です。

試料調製

分析用試料として脱水ケーキと遠洋性粘土の2試料を用意し、加圧成形による試料調製を行いました。

測定用試料は105℃で2時間乾燥させた後、クロムスチール製粉砕容器を用いて粉砕しました。粉砕後塩ビ製リングを用いて100Nで加圧成形しました。

今回測定試料は成形助剤(バインダー)なしで加圧成形を行いましたので、万一の試料落下による装置汚染を避けるため厚さ4mmのプロレン® (Chemplex 401)フィルムで測定面を覆って測定しました。

分析例1: 脱水ケーキ

汚泥を脱水した後に残る残渣は脱水ケーキと呼ばれます。脱水後の残渣とはいっても数10%もの水分を含み、様々な有機物を含有しています。このため試料ごとに非測定成分が異なり、従来法では分析結果の信頼性がなかなか向上しませんでした。

この脱水ケーキについてSQX散乱線FP法による分析を行いました。結果を表1に示します。本分析法による分析値は化学分析値とよく一致していることがわかります。このことはSQX散乱線FP法による非測定成分推定が適切に行われていることを示しています。

1 脱水ケーキのSQX散乱線FP法分析結果     

脱水ケーキのSQX散乱線FP法分析結果

分析例2: 遠洋性粘土

次に(独)産業技術総合研究所地質調査総合センターの遠洋性粘土(JMS-2)についてSQX散乱線FP法による半定量分析を行いました。一般に土壌や底質堆積物は複雑なマトリックスを持ち、非測定元素は試料ごとに異なります。このような試料に対してSQX散乱線FP法を適用することで簡便にスクリーニング分析を行うことが可能になります。

結果を表2に示します。遠洋性粘土を構成する主成分元素(軽元素)から微量重元素まで認証値と半定量分析値は非常によく一致しています。

2 遠洋性粘土(JMS-2)SQX散乱線FP法分析結果

遠洋性粘土(JMS-2)のSQX散乱線FP法分析結果

まとめ

従来の半定量分析法では正確な分析が困難だった試料品種に対するSQX散乱線FP法の適用例を紹介しました。SQX散乱線FP法を用いることで非測定の残分を気にすることなく酸化物粉末試料の半定量分析を行うことが可能です。これにより半定量分析の応用範囲がより広がることが期待されます。

SQX分析とは

SQX分析はFP法による理論強度計算を用いる半定量分析プログラムです。フッ素からウランまでの元素範囲に対する定性分析の結果をもとに、装置に登録された感度ライブラリを用いて未知試料の元素含有量を計算しますので、分析するにあたって標準試料を準備する必要がありません。スペクトルが重なっている場合でも重なりの影響を自動補正する理論重なり補正機能を搭載しており、多数の元素を含む試料でも安心して分析することが可能です。

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