有機ELデバイスの劣化機構の解明 ~熱刺激電流による電子トラップの解析~
Application Note
TA7002
何がわかるのか?
熱刺激電流測定(Thermally Stimulated Current :TSC)は、試料に電界を加えることにより試料内部や表面および界面に存在する電荷トラップを注入キャリアで蓄積させ、昇温過程でのトラップサイトからの熱放出(脱トラップ)現象で生じる熱刺激電流を検出する測定手法です。
一般的な無機半導体材料のみならず、有機電子材料の電荷トラップの測定が可能であり、有機ELデバイスの有機層内部や絶縁層近傍の電荷トラップを検出する手法として有用です。
測定・解析例
有機ELデバイスの劣化特性において、二層積層型と混合型デバイスでは劣化特性が大きく異なることが知られています。 混合層を用いる方が、より耐久性が向上することがわかっていますが、そのメカニズムは明らかになっていませんでした。そこで熱刺激電流(TSC)法によりトラップ準位を測定し,劣化機構をトラップ生成の観点から解析いたしました。
その結果a-NPDのホールとラップやAlq3の電子トラップは大きく変化しませんが、二層積層構造においてAlq3のホールトラップが連続駆動に伴って大きく増加することがわかりました。このことより有機ELデバイスの劣化要因としてAlq3のホールトラップが関与していること考えられます。このようにTSC測定法は混合層や多層膜のトラップ分布やモルフォロジーに関する知見を与えてくれるユニークな手法です。
図1 試料の構造とトラップモデル
図2 熱刺激電流特性とトラップの分離
推奨装置: 熱刺激電流測定装置TS-FETT
- データ:九州大学 未来化学創造センター 安達千波矢教授 ご提供
- 参考文献: J. Appl. Phys. Vol. 46, No. 25, 2007, pp. L636–L639