ポリカーボネートの紫外線劣化
はじめに
ポリカーボネート(PC)は高い透明度、耐衝撃性等の特長があり、レンズ等様々な部材に利用されています。B-TA2012(TG-MSによるPC分解反応への水蒸気の影響)で報告したように、PCは加水分解により劣化が進み、原材料のビスフェノールA(BPA)が生成することが知られています。そこで今回は紫外線(UV)を照射した際のPC劣化を確認する為にBPAの発生挙動をTG-DTA/GC-MS測定にて確認しました。
測定・解析例
試料はUV未照射のPCとUV照射(UV波長:365nm、照度:400mW/cm2、温度:30℃、時間:4h)したPCについてTG-DTA/GC-MS測定を行い、TGの分解温度およびBPAの発生挙動の比較を行いました。
TG-DTA/GC-MS測定はHe雰囲気にて600℃まで20℃/minで昇温し、イオン化法はEI法で測定しました。
図1にTG結果およびBPAの主イオンであるm/z 213(図2参照)のMSイオンサーモグラム及びm/z 213の400℃までの拡大プロットを示します。
TGの結果ではUV照射したPCの方が減量温度が低い傾向が見られます。また、BPA(m/z 213)の発生挙動を確認したところ、m/z 213のピーク面積は照射有のPCの方が約5%大きく、未照射PCと比べて照射有PCの方がBPAの発生量が増加していると判断されます。また、400℃までのBPAのMSイオンサーモグラムを比較したところ、照射有の方が低温からBPAが発生していることが分かります。
BPAの発生挙動の違いについてはUV照射の影響が考えられ、UV照射によりPCの劣化が進行したものと考えられます。
図1 (a)UV照射有PC、未照射PCのTGとMSイオンサーモグラム(m/z 213)と(b)m/z 213の拡大プロット
図2 ビスフェノールAのNISTライブラリスペクトル
推奨装置・推奨ソフトウェア
- TG-DTA8122および1ch MS-IF、GC/MS
- DSCvesta、UV照射ユニット
- Thermo plus EVO2ソフトウェア、3次元解析ソフトウェア