ポリマーの熱分解キャラクタリゼーション

Application Note TA-6008

何がわかるのか? 

ポリマーの熱分解キャラクタリゼーションには、従来から熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(パイロライザー:Pyrolysis GC/MS)が利用されておりますが、発生したガスは、冷却トラップならびに再昇温プロセスを経るため熱履歴の影響を強く受けます。このため、熱分解による活性な生成ガスは、熱履歴により安定化、あるいはガス変質してしまい、試料からの発生ガスを直接且つ正確にトレースしているとは言えません。
スキマー型TG-DTA-PIMS(光イオン化質量分析)は、上記、熱履歴の影響を無視でき、しかもリアルタイムに発生ガスを弁別分析することを可能とするため、材料の熱分解キャラクタリゼーションのために最も有効な手法となります[1]。

測定・解析例

ナイロンは、アミド結合によって多数のモノマーが結合してできた脂肪族骨格を含むポリアミドです。TG-DTA-EI/PIMS法を用いたナイロン12の熱分解生成物に対するEIMSとPIMSによる測定結果の比較を図1に示します。従来の電子衝撃イオン化法であるEIスペクトルは、分解成分のフラグメントイオンが低いm/z領域で互いに重なり合い、個々の分解成分を直接、特徴付けることは困難です。これに対して、PI法はイオン化時の分子解裂を抑制し、サンプル間の骨格構造に起因した分解成分を分子イオン状態で検出するため、分解成分をスペクトル上で直接識別することがきます。この結果、PI法ではモノマー成分であるm/z 197のラウリルラクタム(炭素数12)等がマススペクトルにて明瞭に特徴付けられています。このように、PIMSのフラグメントフリーな特性は、サンプル間の微小な変化を敏感にキャッチし、サンプルの直接的な熱分解キャラクタリゼーションに役立ちます。 

ナイロン12の不活性ガス中でのTG-EI/PIMS曲線とマススペクトルの比較

図1 ナイロン12の不活性ガス中での
 TG-EI/PIMS曲線とマススペクトルの比較

上図:TGとTIC(EI)曲線、
         中図:460℃のEIマススペクトル, 
          下図:460℃のPIマススペクトル

参考文献:[1] T.Arii, S.Otake, “Study on thermal decomposition of polymers by evolved gas analysis using photoionization mass spectrometry (EGA-PIMS)”,      J. Therm. Anal. Cal., 91 (2008) 419-426.

推奨装置: 示差熱天秤-光イオン化質量分析同時測定装置ThermoMass Photo

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